良好な口腔状態を保つために

実践!口腔ケアマニュアル

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介護サービスを受けられている方の一番の楽しみは食べること。食べる楽しみを失うと栄養面での問題が生じ、加えて肺炎のリスクも高くなってきます。口腔内の問題は放置すると全身的な問題にまで発展してしまいます。

厚生労働省が行った要介護者の口腔保健に関するレポートによると、日常生活自立度が低下するほど、重度う蝕が多くなり、歯科治療の必要性も高くなる傾向があると発表されています。また、後期高齢者の多くは入れ歯を使っていますが、義歯装着者は全体の77・2%で、その内、調整あるいは修理が必要なものが20・1%、新しい義歯を制作する必要のあるものは38%。実に入れ歯を使っている人の半数は義歯修理や新製が必要な状態なのです。

歯科治療の必要性から見ると、89・4%が「なんらかの歯科治療または専門的な口腔ケア」が必要である一方、実際に歯科受診を受診したものは26・9%で、歯科治療の必要性と実際の受診状況には大きな隔たりがあります。

だから、口腔ケアを導入する前には、年に1回の定期健診を定着させることから始める必要性があるのです。口腔ケアは、あくまで口のなかのトラブルを治療し、そのよい状態を維持するためのものなのです。

定期健診を受け、義歯を調整し、プロによる専門的口腔清掃を受けることで、肺炎になりにくくなります。口腔内の雑菌が誤って肺に入ることで起きる誤嚥性肺炎を防止でき、さらに、自分の口から食べることで栄養改善が図られるからです。

介護を要する高齢者の場合、定期的なプロの専門的口腔清掃を受けている場合と、受けていない場合を比較すると2年間の肺炎の発症率は半分になるとのデータがあります。

また、口腔内の状態を改善し、口から食事ができるようになると褥瘡が治りやすくなるというメリットもありあます。なぜなら点滴だけでは血清アルブミン値は上がらないからです。食事から栄養をとることは、それだけ効果的なのです。寝たきりになった方にとっては、口を動かすことが全身的なリハビリの第一歩にもなります。

介護サービスを提供される方は、ぜひとも利用者へ年に1回の口腔健診を定期的に実施し、利用者の生活の質の向上につなげて頂きたいと思います。

「良好な口腔状態を保つために」のまとめ

ここがポイント
  • 後期高齢者の9割近くが歯科治療・専門的な口腔ケアが必要な状態でありながら、実際に受診しているのは3割に満たない
  • 定期的な口腔健診を受けることで、誤嚥性肺炎の発症率は2分の1になる

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