摂食・嚥下障害のある人の口腔ケア

実践!口腔ケアマニュアル

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今回は摂食・嚥下障害のある人の口腔ケアについて説明します。

人間は体内に食べ物や水分を取り入れることで生きています。そして、その食べ物や飲み物を口から体内に送り込む機能に問題がある状態を「摂食・嚥下障害」と言います。

食事中や食後にむせや咳をよくしたり、食べているときに口から食べ物をこぼしたりするのは、摂食・嚥下障害の人によくみられる症状です。また、体重や尿量が減少したり、脱水・低栄養状態にある場合も摂食・嚥下障害が疑われますから、注意が必要です。

摂食・嚥下障害のある人がもっとも起こしやすい合併症は、誤嚥性肺炎です。特に脳血管の病気や、中枢神経系の病気(パーキンソン病等)にかかっている人は誤嚥性肺炎を起こしやすく、また口腔内が不衛生になりがちで、嘔吐、胃食道逆流等が発生しやすい点も、誤嚥性肺炎のリスクを高めることになっています。

なかでも食べ物を口から摂っていない人は、だ液の分泌が減って自浄作用が低下してしまい、口のなかに細菌が繁殖しやすくなっています。そして細菌で汚染されただ液を飲み込むことによって、治りにくい肺炎にかかってしまうことがあるのです。

このため、摂食・嚥下障害のある人の口腔ケアは、その障害を軽減させるリハビリ的な要素を併せ持ったものが望ましいと言えます。口腔ケアをしながら感染予防だけでなく、唇、舌、鼻腔等の運動機能の強化をはかる必要があるのです。

ケアをする際は口腔や咽頭を観察して、合併症の有無や年齢、栄養状態、感染状態を考慮しながら行うことが大切です。基本的に、歯は歯ブラシで磨きます。口腔が激しく乾燥している場合は保湿剤を使いますが、同時にだ液腺をマッサージ等で刺激して、だ液の分泌を促すようにします。

以下に食後の口腔ケアについての留意点を挙げます。

  • 口のなかに食べ物が残らないよう、食後はお茶等で充分きれいにする。
  • 歯に挟まった食べ物は頬を膨らませながら舌を使って除去させたり、お茶を含ませて口をゆすぐように指導する。
  • 食べかすは、水飲みやシリンジで洗浄して確実に吸引する。特にまひ側は残りやすいので、気をつける。
  • 食事中にむせる人は、口腔ケアの前後に「エヘーン!」と咳をさせる。
  • 食後すぐにベッドに寝かせない。(胃食道逆流予防のため)やむを得ず寝かせるときは、最低1時間は前屈姿勢をとり、ベッドを45度リクライニングさせる。

少しでも不安な場合は、歯科医師の指導を受けて行うことをお勧めします。

「摂食・嚥下障害のある人の口腔ケア」のまとめ

ここがポイント
  • 摂食・嚥下障害のある人は、合併症として誤嚥性肺炎を起こしやすい
  • 摂食・嚥下障害のある人の口腔ケアは、障害を軽減させるリハビリ的要素を併せ持ったものが望ましい

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