口を開いてくれない方の口腔ケア

実践!口腔ケアマニュアル

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日本訪問歯科協会の主催する口腔ケア講習会では「口腔ケアをしようとしても、利用者さんが口のなかを開けてくれない」という相談を参加者から受けることがよくあります。口のなかを人に見られるのは恥ずかしいという感情、見せまいとする行為は、人間に備わっている防衛本能とも言われています。
ほかに、口を開かない原因としては次のようなケースがあげられます。

  • 形態機能的原因・・・顎関節症、口腔内潰瘍、気管内挿管等
  • 心理社会的原因・・・口臭が気になる、何をされるのか不安、痛みへの不安等
  • 認知機能的原因・・・どうしたらよいかわからない、指示内容を理解できない等

本人が「開けられない」のか「開けたくない」のかを、これらの原因に照らし合わせて考え、対処する必要があります。大雑把に言えば、日常生活で会話ができる、食事が取れる、あくびをする患者の場合、「口を開けない」原因は形態機能的なもの以外と考えられます。逆に、日常生活において、上記のようなことができない場合には、形態機能的な原因が疑われますから、すぐに歯科医師に見てもらってください。

介護者が口腔ケアを行う際の基本姿勢としては次の3つが重要なポイントです。

    1. 信頼関係を作る
    2. ケアの苦痛を最小に、爽快感を最大に
    3. ケアを無理強いしない

    例えば、開口させる前には、患者本人に安心感を与えるため、手を握る等のスキンシップを図りながら「今からお口のなかをきれいにしますね」等の語りかけをします。また、「いまからこれを入れてお口のなかを見ますね」と声がけしながら、歯ブラシを見せましょう。口角に歯ブラシを滑り込ませるときにも「ちょっとヒンヤリしますね」、「入れますよ」と言葉を短く切って語りかけながら行います。

    強い拒否がない場合には、開口保持のために、まずK-point刺激法を試みることも有効です。K-point刺激法については、歯科医師から指導を受けてください。

    口腔ケアでは、なるべく苦痛のない、気持ち良いケアを心がけます。ケアに対して恐怖心や抵抗感が強い場合は、時間帯を変えて試みる等、相手のペースに合わせることも大切です。

    特に認知症の方の場合は、自らの身体状況を的確に訴えることが少ないので、個別に対応する必要があります。例えば、手を口のなかに繰り返し入れる、口の周りを手で覆う、口を開けようとしないなどの動作、行動は、むし歯や口内炎、口腔粘膜疾患や入れ歯による痛みを示していることが多くあります。このようなときは無理にケアをしないで、早めに歯科を受診してください。

「口を開いてくれない方の口腔ケア」のまとめ

ここがポイント
  • 口を開かない理由は「開けられない」のか「開けたくない」のかを確認する
  • 苦痛のない、気持ちのよい口腔ケアを心がける

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