認知症患者への歯科訪問診療
実践!口腔ケアマニュアル
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「歯が痛そうだけど、認知症で口をなかなか開けてくれません。こんな人の治療はできますか?」。日本訪問歯科協会のコールセンターには、このような問合せが多く寄せられます。厚生労働省のデータによると、認知症患者の数は2005年には205万人と言われていましたが、2035年には445万人にまで膨れ上がると推計されています。
歯科の訪問診療は、ポータブルユニットという持ち運びのできる医療器具を使用するため、外来とほぼ同等の治療を行えます。しかし、認知症患者は、周辺症状である徘徊、攻撃、暴言、暴力、拒絶等の問題行動を伴うこともあるため、歯科治療が困難であることが多いのです。認知症患者の歯科訪問診療で一番の問題となるのは、興奮しやすかったり、暴力的であったり、口を開けないなど強い拒否を示す場合です。
このような患者に対しては、歯科医師と医師が連携しながら治療を進める必要があります。例えば、歯科治療の30分くらい前に、医師から処方されたリスペリドン等の安定剤を飲んでもらい、患者の精神が安定したことを確認してから治療に入るケースなどがあります。患者の状態や服用している薬、そして副作用等も考慮する必要がありますから、歯科医師一人の判断では治療に入れないことも多くあります。そのため、歯科医師が訪問してもすぐに治療にかかれない場合もあるのです。
では、認知症患者の歯科治療を依頼するには、どうような手順が必要なのでしょうか? まずは訪問診療を行っている歯科医院を見つけ、電話で依頼します。その際、患者の状態と、かかりつけの医師の連絡先を必ず伝えます。そうすれば二度手間になることを防げます。もし、訪問診療をしている歯科医院がみつからないときには、地元の歯科医師会か、日本訪問歯科協会へ電話すれば簡単に教えてもらえます。
初めて訪問歯科医師を迎えるときには、介護施設の担当者やご家族、独居の方の場合はケアマネジャーに必ず立ち会っていただく必要があります。このときに、歯科医師が患者の状態を確認して、どんな治療が必要か、医師との連携をどのようにするか、そして費用はどのくらいかかるのかを説明してくれます。
それらを理解いただいたうえで治療と口腔ケアを始めることになります。場合によっては、治療は行わないと判断することもあります。この点も理解していただきたいと思います。
「認知症患者への歯科訪問診療」のまとめ
- 認知症患者の歯科治療では、診療依頼時に患者の状態と、かかりつけ医の連絡先を伝えること
- 初回訪問時にはケアマネジャーに立ち会ってもらい、治療内容や費用の説明を聞く
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