簡単にできる口のリハビリテーション

実践!口腔ケアマニュアル

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あまり意識されていませんが、口は、体のほかの部分と同じように、使わなければその機能が低下してしまいます。口腔機能が低下すると、唾液の分泌量が減ったり、顎や舌の運動機能が低下したりするため、栄養不足や体力低下を招いて感染症等にかかりやすくなるなど、さらに大きなトラブルを招いてしまいます。

そこで、今回は、簡単にできるお口のリハビリ方法をご紹介しましょう。

ふだん私たちは、食べ物を飲み込む瞬間は、気管に入らないよう無意識に息を止めています。しかし呼吸のコントロールがうまくいかないと、息を止めることができずに吸い込みながら食べてしまいます。その結果、窒息や肺炎の原因になる「誤嚥」を起こしてしまいます。

誤嚥を予防するには、まずは呼吸のコントロールが重要です。誤嚥しそうになっても、むせて吐き出すことができれば大丈夫。むせることは反射的に食べ物を吐き出そうとする防御反応です。正しくむせるには、腹に息をため込んで、思い切り吐き出せなくてはなりません。

深呼吸とせきの練習はこうして行います。まず、深呼吸をして、いったん息をとめた後、エッヘンとせきをして息を吐き出します。これを何度か繰り返します。自分で寝返りができる方は、うつぶせに寝て、自分の体の重みを利用し、5~10分、おなかを意識して呼吸します。

たったこれだけでも、誤嚥を防止するせき込みのトレーニングになるのです。

次に、よく噛むためのリハビリを行います。上手に物を噛むためには、舌やほおの動きが重要です。これらの動きがよくないと、歯があってもうまく噛めず、いつまでも口のなかでもぐもぐしてしまいます。舌やほおのストレッチ運動で、口の動きをしなやかにしましょう。

具体的には、「舌を出したり引っ込めたりする運動」、「ほおをふくらませたり、へこませたりする運動」、「舌先を左右の口角につける、舌先を唇の上と下につける運動」、さらに「口のなかにスプーンを入れ、ほおの内側から外側に軽く押して、ほおの筋肉でスプーンを押し戻す運動」などが効果的です。また、食事の前には、首を前後左右に倒してストレッチし、緊張をやわらげると、舌や喉の動きがなめらかになり、誤嚥を防止できるようになります。

こうした口のリハビリは、高齢者でも自分でできます。歯科衛生士から15分程度のレクチャーを受ければ、介護職員でも日常的な指導ができるようになります。自己流だとさまざまな利用者の状態に合わせた指導ができませんから、ぜひ一度、訪問診療を行っている歯科医院の衛生士を招いて、実習の機会を設けてください。

「簡単にできる口のリハビリテーション」のまとめ

ここがポイント
  • 誤嚥予防には呼吸のコントロールが重要
  • 舌とほおのストレッチで、物をよく噛めるようになる

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