入れ歯と嚥下の関連性
実践!口腔ケアマニュアル
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居宅介護支援事業所のケアマネジャーの方とお会いする機会があると、しばしば食事形態やムセについての相談を受けることがあります。
特に季節の変わり目などは、利用者が体調を壊しやすかったりするので、しっかり食べているか、栄養状態はどうかなど、食事に関して注意を払うようになります。すると、利用者の食事のときのムセや嚥下機能の低下が気になるのでしょう。今回は、嚥下機能と義歯の関係について説明します。
摂食・嚥下障害により誤嚥する可能性が高い人に適切な入れ歯には2種類あります。1つは、一般的な入れ歯。つまり、歯がなくなったために、咀嚼することを補うために作るものです。もう1つは、舌がん等で構音障害が出た人などに作られる特殊な入れ歯で、食べ物を咀嚼した後にスムーズに嚥下できることを目的にしたものです。
一般的な入れ歯でも、口のなかに合ってさえすれば、咀嚼がスムーズになり、食事がとりやすくなると思われがちです。しかし、摂食・嚥下障害を持つ人にとっては、特に上下の入れ歯を装着すると、かえって誤嚥の可能性が高くなることもあるのです。
食べ物を咀嚼して喉に送り込む際には、舌を口腔内の上の壁(口蓋)に押し付けて、嚥下のための圧力を発生させます。この嚥下圧は、上あごだけに入れ歯をつけているときは、うまく発生して安全に飲み込むことができることが多いのですが、上下に入れ歯をつけると、舌の動く範囲が狭くなるためり、圧力を発生させにくくなります。こうして「誤嚥」の可能性が高くなってしまうのです。
そのため、一般的な入れ歯の場合は、まず上あごだけにつけて嚥下能力の回復をはかるなど、適切な使い方をすることが大事です。食事の形態も、ミキサー等を使い、嚥下能力に合ったものにする必要があります。
もう1つの〝特殊な入れ歯〟とは、発音機能の回復を目的に作られますが、嚥下・咀嚼機能改善にも効果があるので、高齢化で飲み込む際の嚥下圧を発生できなくなった人にも適用されます。作り直しが可能で、よく適合したものができますから高い改善効果を得られます。反面、変形や破損を起こすことがあるため、調整に時間がかかります。また長時間装着すると歯の障害を起こすこともあります。
こうしたことを適切に選択できるのは、やはりベテランの訪問歯科医師です。気になった利用者がいるようなときに、気軽に相談できる歯科医師がいると心強ですよ。
「入れ歯と嚥下の関連性」のまとめ
- 摂食・嚥下障害のある人は、上下の入れ歯を装着すると逆に誤嚥の可能性が高くなる場合がある
- 義歯の適切な使い方、調整の仕方は、ベテランの訪問歯科医に相談するのがよい
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