舌の手入れ
実践!口腔ケアマニュアル
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口腔ケアが行き届いていない方の部屋に入ると、異様な臭いに気付くことがあります。
その臭いの主な原因が口臭です。口臭の原因は、9割以上が口のなかにあります。口のなかには細菌を攻撃する白血球の成分に加え、食べかす等もあるため、タンパク質が豊富です。口腔内の細菌がこれらのタンパク質を分解する過程で発生する「揮発性硫黄化合物」という不快な臭いを放つ硫黄ガスが、口臭の正体です。
皮膚が垢となってはがれるように、口腔内の粘膜の外側にある上皮細胞もはがれます。はがれた粘膜上皮細胞は、おもに舌の表面のざらざらした部分にたまり、ここに血球成分や食べかす、死んだ細菌等が集まり舌苔という苔のような堆積物になるのです。歯がない人でも、入れ歯をしていなくても口腔ケアが必要なのは、このようにして汚れがたまるためです。
成人が一日に分泌する唾液の量は約1・5リットルとされますが、年を重ねるごとに唾液を分泌する唾液腺が委縮するため、70歳以上では20代の4割程度しか分泌されなくなります。
唾液には、口のなかの浄化作用や抗菌作用があるので、分泌量が少なくなると浄化作用が低下して舌苔や歯垢が付きやすくなります。また抗菌作用の低下によって口腔内の細菌も増殖します。こうして、口臭の原因物質を発生させる環境が整っていくのです。
要介護高齢者の場合、いろいろな薬を服用していることが多いのですが、なかには副作用として唾液の分泌を抑えてしまうものがあります。例えば、抗うつ薬、気分安定薬、抗不安薬等の向精神薬や、鎮痛剤、利尿剤、抗パーキンソン剤、降圧剤等です。これらの薬を服用されている場合は、口腔乾燥症になりやすく、これが口臭へとつながってしまうことがあります。
口臭を防ぐには、まずは舌の清掃を行うことです。ガーゼや舌ブラシ等で舌苔を取り除きましょう。舌は非常に柔らかく傷つきやすいので、強くこすり過ぎないように注意します。舌を傷つけてしまうと味覚障害を引き起こす危険があります。1日1回程度、100グラム以下の力でなでるようにします。
舌苔がたまりやすいのは、動きの少ない舌の奥の部分です。まずは、ガーゼを人差し指に巻きつけて、目で見える一番奥から舌先に向けゆっくりなでるようにします。ガーゼが薄い黄色になったら舌苔がついている証拠です。次は舌ブラシを使って5回ほどブラッシングで清掃した後に、再度ガーゼで拭います。それで色がつかなかったら舌苔は取れたと言えます。
「舌の手入れ」のまとめ
- 口臭の原因は、その9割以上が口腔内の細菌が発生する硫黄ガス
- ガーゼや舌ブラシで舌を清掃して口臭を防ぐ
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