感染症と誤嚥性肺炎の防止策
実践!口腔ケアマニュアル
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日本歯科新聞(平成23年4月5日)の記事に、東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故で鹿沼総合体育館に避難している方に支援物資を届けた際、上都賀歯科医師会が行った「歯と口腔の健康に関する緊急アンケート」の結果が掲載されていました。
避難者438人中、370人から回答があり、「歯やクスリのことで困っていることがある」と回答したのは55人、全体の17・9%でした。具体的には、「歯の詰め物が取れた」が12人、「歯が痛い」10人、「入れ歯が壊れた」が7人、「歯が欠けた」が6人など、多くの声が上がっていました。また、口腔ケア関連用品に関する設問では高齢者が多いこともあり、「入れ歯洗浄剤が必要」と答えている方が半数近くいたようです。
集団生活のなかでは感染症拡大のリスクがあるため、口腔ケアの重要性を幅広く伝える必要があります。そこで今回は被災地で活動をされていた歯科医師からうかがった「誤嚥性肺炎」についての話をお伝えします。
阪神大震災の震災関連死922人のうち、223人が肺炎で死亡したという記録があります。肺炎による死亡の9割が65歳以上の高齢者です。特に高齢者では食べ物や口のなかの細菌等が誤って肺に入って発症する「誤嚥性肺炎」が多く見られます。本人も気づかないうちに唾液や胃液等が肺に入る不顕性肺炎も多く、寝ている間に誤嚥を起こしていることもあります。この誤嚥性肺炎は日常の「口腔ケア」と「嚥下機能維持」で予防できます。
避難所で生活を送っている方々は満足に歯も磨けず、衛生状態が悪化しています。また、歯ブラシを配られても、水が十分になく、歯磨きどころではないということケースもあるでしょう。また避難生活が長くなると、むし歯が炎症を起こしたり、うんだりする可能性が高くなります。特に高齢者は、誤嚥性肺炎の危険も増すため、口腔ケアはとても重要です。
なかでも、入れ歯の利用者の多くは震災以降、入れ歯をつけっぱなしの状態が多いと指摘されています。入れ歯洗浄剤がない場合は、ウェットティッシュで入れ歯を拭うだけでも洗浄効果があると言われています。
歯ブラシがなくても、ティッシュペーパーやスポンジ等で歯のぬめりや舌を掃除すれば、ある程度は口腔内の雑菌を除去できます。
まずは「口腔ケア」で口のなかを清潔に保ちましょう。汚れを残さないようにきちんとブラッシングできる方は歯磨きます。ブラッシングが難しい場合は、ブクブクうがいだけでも行います。ブクブクうがいも難しい方は、清拭等で口のなかを清潔に保つようにしてください。
「感染症と誤嚥性肺炎の防止策」のまとめ
- 阪神大震災の震災関連死の約25%は肺炎によるもので、大多数が高齢者の誤嚥性肺炎
- 避難所では歯磨きも困難だが、ウェットティッシュで入れ歯を拭くなどのケアでも効果がある。口のなかを清潔に保つこと
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