低栄養防止と口腔健診
実践!口腔ケアマニュアル
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今年8月に、アメリカの医療・介護施設の視察に参加してきました。その際に、特に興味深かったことが、ナーシングホームの視察です。ナーシングホームでは、入所者の体重の減少に関して特に厳しく監査が行われているのです。
例えば、入所者の体重が減った場合、まずは低栄養が疑われます。1ヵ月に体重が3ポンド(約1・4kg)以上減少していた場合は、まず最初に口腔内を確認することがマニュアルによって義務付けられていました。その後に歯科医師、栄養士、言語聴覚士が召集され、利用者の口腔内の状態や食事等についてのカンファレンスが行われます。これを放置することは虐待とされています。このように、アメリカでは、栄養状態と口腔機能の関連性を重視しているのです。
日本の居宅サービス利用者の栄養状態を調査したレポートによると、過去6ヵ月間に概ね3%以上の体重減少が認められたものは、平均で11・2%でした。しかし特に注目したいのは、平均値を上回っていた要支援1の13%と、要介護5の18・4%です。言い換えれば、在宅で療養している方のなかでは、要支援になった段階と、要介護5の段階が最も栄養に関して問題があるということなのです。
介護度が重度化する原因の1つが低栄養です。食事量の減少によって、たんぱく質、エネルギー不足(いわゆる低栄養状態)になり、筋肉量の減少、体力の低下、抵抗力低下から要介護度状態が深刻になるというものです。この食事量減少の要因としては、心身機能の低下(食事を食べる行為が不自由になったり、長い時間立つことができず調理ができなかったりすることなどが原因となっているもの)、病気や薬の副作用、生活環境の変化(身近な人が亡くなったり、独居になったりしたことなど)、そして噛んで飲み込む機能の低下などがあります。
実際の現場では、さまざまな職種の方が栄養管理に携わっていますが、管理栄養士が在宅に赴き管理することは極めて稀です。訪問看護師の数はそれより多いのですが、対応するのは食事や栄養の問題がかなり進んでからになりがちです。またケアマネジャーに関しては、配食サービスや食事の準備ができるヘルパーの調整がメインになってしまい、利用者の嗜好性、経済性から長期的な栄養管理の維持が困難になっていることが多いと言われています。
なによりも、こうした状態になる前に行っておきたいことがあります。それは、口腔内に問題が生じていないかの確認です。例えば、義歯が合わなくなっていないか、口腔内の衛生が保たれず味覚が低下しているのではないかなどを確認するということです。訪問診療に携わっている歯科医師の多くが「介護認定を受けたら、まずは歯科健診を」と強調しているのはこういう理由からなのです。
「低栄養防止と口腔健診」のまとめ
- 在宅療養者の場合、低栄養が原因で介護度が重度化する
- 低栄養を引き起こす要因ともなる口腔内環境の悪化を防ぐためにも、介護認定後は歯科健診を受けること
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