食べなくても口腔ケアをする習慣
実践!口腔ケアマニュアル
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「食べたら歯を磨く」と、子供のころから言われ続けていたせいか、私たちは食後には歯を磨くことが習慣になっています。しかし、逆はどうでしょうか?「食べなかったら歯を磨かなくてもいい」と思ってはいませんか?
意識障害や嚥下障害等で口から食べられない人は、チューブを使って流動食を体内に入れます(経管栄養)。これには、チューブを鼻から胃に通す経鼻的胃管と、腹に小さな穴をあけて胃や腸に直接通す胃ろう・腸ろうがあります。いずれの場合も、口からものを食べるわけではないから口のなかは汚れないと思い込んでいる方が多いようですが、これは大きな間違いなのです。
人間は食べたり話したりできない状態が続くと、唾液の分泌が少なくなって、口のなかの汚れを洗い流すことができず、かえって口のなかに汚れがたまることになります。そのため経管栄養の方には、歯ブラシだけでなく、舌などの口腔粘膜の汚れを取り除く器質的口腔ケアが必要です。
また、口腔機能回復・維持のためには、機能的口腔ケアと言われる口腔周囲筋のマッサージや運動訓練も必要になる場合が多いのです。
経管栄養の方でなくても、「食べなくても歯を磨く習慣」がないために、とんでもない口腔状態になる方は少なくありません。降圧剤を服用している方の症例発表で知ったのは、こんなケースです。その患者さんは家族の協力もあって、食事の後には確かに歯を磨いていました。しかし、薬の副作用でよく喉が渇き、日頃から水分をまめにとっていて、歯を磨いた後でも寝る前には必ずスポーツドリンクを飲んでいました。糖分の多いこのスポーツドリンクが全ての歯をボロボロにしたのです。
唾液は1日に1000mlから1500mlほど分泌します。ところが唾液は老化や糖尿病等によって減少します。唾液が少なくなることで空嚥下の頻度が減少して、嚥下障害を引き起こすことがあります。
誤嚥性肺炎の予防策として、口腔ケアがよく取り上げられますが、口腔ケアだけをしていれば安心というわけではありません。例えば、食後1時間は座位を取ること、摂食機能療法を行い、口からものを食べられるように支援し、唾液嚥下や嚥下反射、咳反射の機能を促すこと、免疫力を改善することなども必要です。
さらに、嚥下障害をもたらす原因に患者が服用している薬剤の副作用が大きな影響をもたらしていることもあります。具体的には、高血圧薬、心臓病薬、睡眠薬、抗精神薬、認知症薬等です。
例えば強い睡眠剤はドーパミンを抑制するため、嚥下反射と咳反射の低下を引き起こし、それによって誤嚥性肺炎を発症させることもあります。
歯科医師のなかには、このような薬の副作用を軽減させるために漢方薬の処方を研究しているグループがあり、今後の成果が期待されています。
「食べなくても口腔ケアをする習慣」のまとめ
- 食べなくても口は汚れる
- 病気による唾液の減少、薬の副作用による嚥下障害などによって口腔状態が悪化するため、食べなくても口腔ケアは必要
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