訪問歯科で入れ歯のメンテナンス
実践!口腔ケアマニュアル
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厚生労働省の調査によると、歯がほとんどないのに入れ歯を入れなかった人は、歯が20本以上ある高齢者より1.9倍も認知症の発症リスクがあると報告されています。これは、65歳以上の健常者4425人を対象として4年間の追跡調査で認知症が発症したかどうかを調べたものです。この調査では、同じ様に歯がなくても入れ歯を入れていれば、認知症になるリスクを抑制することが可能であることもわかりました。
噛むことが認知機能に大きなかかわりがあると言われています。歯がないのに入れ歯を入れないままでいると噛むことができなくなります。噛むという行為によって脳に刺激を与えることができないのに加えて、噛めなくなることで栄養も偏ってしまいます。噛めないということで、人体に大きな影響を与えることになるのです。
歯のない人がしっかり噛むためには、口に合う入れ歯を使うことが重要です。入れ歯を入れるようになると、どうしても歯茎がやせたりして合わなくなります。一般に入れ歯の寿命は5、6年と言われていますが、その間、快適に使い続けるためには定期的なメンテナンスが必要になります。
特に寝たきり状態の方は口腔内の環境が短期間に変化してしまいます。入院前に使っていた入れ歯が退院したらまったく合わなくなったと言う方が実に多くいます。一般的に、入れ歯を使っている人は半年に1回の健診が必要ですが、要介護認定を受けている方は3ヵ月に1回は歯科医師によるチェックを行ってもらいたいものです。
入れ歯を入れると口中の唾液が回りにくくなり、そのため歯垢が付きやすくなります。入れ歯に歯垢がつくというと驚く方もいますが、この歯垢はデンチャープラークといって、残っている歯をむし歯や歯周病にする原因となります。また口内炎や誤嚥性肺炎、口腔カンジダにもかかりやすくなります。これらのリスクを軽減するためにも定期的なメンテナンスは必要です。
訪問歯科を利用して定期的なメンテナンスを受けるメリットは、単に入れ歯の調整をしてもらうだけではありません。入れ歯の手入れ方法や、全身状態や口腔状態の変化に応じた療養上の指導をうけることができ、食形態や食べ方についても、一人ひとりにあったアドバイスを得られます。
「入れ歯のことで訪問歯科を使うと費用が高くなるのでは?」という不安を持つ方もいるようですが、保険扱いで受けられるので、費用は外来より少しだけ高くなる程度です。タクシーで歯科医院へ往復することに比べればはるかに安い金額です。それより、定期健診を受けないことによって合わない入れ歯のままでいて、全身状態まで損ねては意味がありません。
「訪問歯科で入れ歯のメンテナンス」のまとめ
- 寝た切りの状態では、口腔内の環境が短期間に変化するため、入れ歯が合わなくなることが多い
- 入れ歯の定期的なメンテナンスには、訪問歯科を利用する
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