見逃されていたお口の介護
実践!口腔ケアマニュアル
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要介護高齢者の日常生活で、一番の関心事は何かご存知ですか? 実は、家族の訪問や大好きなテレビよりも、「食事」が最大の関心事なのです(「福祉施設及び老人病院等における住民利用者の意識実態調査分析結果(愛知医報 1998)」。
ところが、余生の一番の楽しみである食事を何らかの問題で楽しめない方もたくさんいます。例えば、入れ歯に問題があって食べられないとか、飲み込み(嚥下)に問題があるという方々です。食事が楽しめないということが低栄養や気道感染、誤嚥性肺炎に深く関係していることは、介護の現場ではあまり関心をもたれていませんでした。きっと、食事や入浴、排泄等の身の回りの介護で手がいっぱいになっているからでしょう。
おいしく食べるためには、口に入れることができる、噛むことができる、味わうことができる、飲み込むことができるという動きが必要になります。これらの口腔機能を向上させるためには介護の現場に〝お口のケア介護〟が必要になります。
では、具体的にどうすればよいのでしょうか?
まずは、明らかに口腔内に問題をかかえている利用者さんは誰なのか特定することです。介護スタッフが口のなかを覗き込むことなく、簡単に利者さんの口腔内の状態を把握できる方法があります。
まずは、「入れ歯をなさっていますか?」と問いかけます。介護を受けている方の多くは入れ歯を入れている方が大半です。「入れ歯をしていない」と答えた方は、入れ歯が合わない等の問題を抱えているために、入れ歯を外していることが多いようです。
「している」と答えたなら、「では入れ歯の容器を見せてくれますか?」ともう一歩踏み込んでみましょう。もし容器がないようなら、その方は入れ歯を入れっぱなしの状態ということになります。入れ歯をずっと入れっぱなしにするのは、健康によくありません。
もう1つの問いかけは「歯ブラシしていますか?」です。「していない」という方は、大半が口のなかに問題を抱えています。「毎日、歯ブラシをちゃんとしている」と答えられた方には、実際にコップに立っている歯ブラシを観察します。歯ブラシが黄ばんでいたり、なかにはカビが生えているようなものまであるからです。
こうした簡単な問いかけと視線で、利用者さんが口腔内に問題を抱えているかどうか簡単に見分けることができます。問題がありそうな場合には、すぐに訪問診療を行っている歯科医師に連絡を取ってください。
「見逃されていたお口の介護」のまとめ
- 介護の現場では、おいしく食べてもらうために口腔機能を向上させる〝お口のケア介護〟が必要
- 3つの簡単な問いかけと視線で、利用者の口腔状態を把握できる
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