訪問診療が軌道に乗り始めると、歯科衛生士を増やし口腔ケアを充実させたくなります。しかし、フルタイムの歯科衛生士を採用した方がよいかどうか悩まれることが多いようです。
そのような場合には、まずはパートタイムでの採用から始めることをお勧めします。最適なのは、結婚や出産で退職されていた元スタッフです。子供に手が掛からなくなっていたら、お昼の時間だけを手伝ってもらうようにするとよいのでしょう。
訪問に出かける歯科衛生士は、若い方よりベテランの方が良いと聞きますようです。人生経験が豊かな女性は訪問診療の現場で機転を利かせた対応ができるからです。
退職したスタッフの中に適切な方がいない場合には、アイデムなどの新聞の折込広告で求人をかけます。
求人を成功させるポイントは、求人広告の表現より、医院のホームページになります。求人広告を見た人は、まず、医院のホームページを見て応募するかどうか検討するからです。
衛生士の求人広告を出してもなかなか応募がないという場合には、ホームページがないが、あってもあまり好感を与えていないことが考えられます。
フルタイムとパートタイムのスタッフが混在する場合、訪問診療の受付や予約調整、準備や後かたづけなどの作業を、誰が、いつ、どのようにするかをしっかり決めておかないと、後々、スタッフ間のいさかいの原因となります。
そのようなトラブルを避けるには、採用の一次面接を発言力のあるスタッフにさせると、採用後の役割分担などがうまくいくようです。また、自分が採用に参加して採用になったメンバーに対しては、その後の教育担当にするというルールをつくるのも一手です。
訪問診療のための歯科衛生士育成法として、“往診留学”があります。
これは、訪問診療の体制が整っている医院の訪問診療に歯科衛生士を一日同行させるものです。さらに、歯科衛生士の単独訪問にも同行させると、俄然やる気を出してくるといいます。時間やお金もかかりますが、それ以上の見返りがあります。
院長先生が張り切って訪問診療をしようと思っても、スタッフの温度差があり、なかなかうまく回らないというケースもよくあります。そのような場合、金銭的なインセンティブの導入も考えられますが、それだけで動かそうとしても、なかなかうまく回りません。
基本的には、内発的な動機付けが必要だからです。もっとも手っ取り早い方法は、患者様さんからの感謝の声を直接聞いてもらうことです。
訪問先を慎重に選び、心から「ありがとう」と言ってくれる患者様さんのところへ同行してもらうのです。1回目は、簡単な手伝いをしてもらえれば十分です。
一番重要なことは、往診から戻る車の中での先生との会話です。
「あの患者様さんは○○○だったけど、もっと困っている人が大勢いるんだ」と、さりげなく、熱く、真剣に、訪問診療の大切さを語ってください。そして「協力してくれないか」と切り出します。こうして話し合えばお互いの理解が深まります。