歯科治療を要する高齢者の急増
平成28年4月の段階で、日本の要介護認定を受けている人口は632万人。介護保険制度が始まった平成12年4月時点では218万人なので、わずか16年で約3倍になっています。
これら要介護高齢者の多くは、口腔内に問題を抱えているにも関わらず、適切な歯科治療を受けることができなくなっていました。
高齢者の歯科受診率は減少
厚生労働省が平成29年に調査した「年齢階級別歯科推計患者様数及び受診率」によると高齢者の歯科医療は外来を中心に行われ、歯科受診率は75〜79歳をピークに、その後急速に減少している実態があります。
高齢者はむし歯の発生リスクが高く、この歯科疾患が放置されると歯の喪失を引き起こし、咀嚼機能をはじめとする口腔機能の低下を招き、食べるという楽しみばかりではなく、生活の質の低下や生きるため意欲に悪い影響を与えます。また、多くの高齢者は義歯の修理や新製、咀嚼機能のリハビリ、口腔ケアなどを必要としています。
まだまだ普及していない訪問歯科の現状
厚生労働省の資料によると、要介護者の約9割は何らかの歯科治療または専門的口腔ケアが必要であるのに対し、実際に治療を受けたのは約27%というのが実情です*。
単純に計算すると平成28年の要介護者数456万人×90%×(100%—27%)=299.5万人。実に300万人近くが歯科治療を必要としているにも関わらず受けていないことになります。
*平成28年4月第10回在宅医療推進会議 資料より
訪問診療の実績がある歯科医院は約2割
訪問診療対応の実績のある歯科医院は、全国に約68,000中、約13,000医院*。
さらに、平成20年度に在宅又は社会福祉施設等における療養を歯科医療面から支援する目的で創設された「在宅療養支援歯科診療所」の数は、平成29年4月の段階でわずか9,763診療所*しかありません。
*中医協 総-2 29.11.10 より
診療報酬改定による追い風
平成30年の診療報酬改定では、「質の高い在宅医療の確保」「ライフステージに応じた口腔機能の推進」の方針が打ち出されました。*
これを機会に多くの歯科医院が、医科、介護との連携をとり、訪問診療に取り組むことが期待されています。
*厚生労働省「平成30年度診療報酬改定の概要(歯科)より」