歯科訪問診療料に加算できる報酬

訪問診療の中で一番大きなベースとなる点数が「歯科訪問診療料」です。歯科訪問診療料に係る加算は9つあります。ここでは、歯科訪問診療料に加算できる報酬について整理します。

1.歯科診療特別対応加算

歯科診療特別対応加算1

著しく歯科診療が困難な者に対して歯科訪問診療を行った場合に、歯科診療特別対応加算1として175点を加算します。
「著しく歯科診療が困難な者」とは、次のような状態またはこれらに準ずる状態です。

「著しく歯科診療が困難な者」とは

  • イ 脳性麻痺等で身体の不随意運動や緊張が強く体幹の安定が得られない状態
  • ロ 知的発達障害により開口保持ができない状態や、治療の目的が理解できず治療に協力が得られない
  • ハ 重症の呼吸器疾患等で頻繁に治療の中断が必要な状態
  • ニ 日常生活に支障を来たすような症状・行動や意志疎通の困難さが頻繁に見られ、歯科診療に際して家族等の援助を必要とする状態
  • ホ 人工呼吸器を使用している状態又は気管切開等を行っており歯科治療に際して管理が必要な状態
  • ヘ 強度行動障害の状態であって、日常生活に支障を来すような症状・行動が頻繁に見られ、歯科治療に協力が得られない状態
  • ト 次に掲げる感染症に罹患しており、標準予防策に加えて、空気感染対策、飛沫感染対策、接触感染対策など当該感染症の感染経路等の性質に応じて必要な感染対策を講じた上で歯科診療を行う必要がある状態

歯科診療特別対応加算1を算定した場合は、歯科診療特別対応加算1を算定した日の患者の状態(トに該当する患者の場合は病名)を診療録に記載します。

歯科診療特別対応加算2

著しく歯科診療が困難な者に対して患者が歯科治療環境に円滑に適応できるような技法を用いて歯科訪問診療を行った場合に、歯科診療特別対応加算2として250点を加算します。

歯科診療特別対応加算2を算定した場合は、歯科診療特別対応加算2を算定した日の患者の状態(トに該当する患者の場合は病名)および用いた専門的技法の名称を診療録に記載します。

歯科治療環境に円滑に適応できるような技法

<行動変容技法の応用> <心理療法技法の応用>
  • 系統的脱感作法
    (Tell-Show-Do法・モデリング法(模倣技法))
  • オペラント(道具的)条件づけ法
  • TEACCH法
  • 遊戯療法
  • ボイスコントロール法 等

歯科診療特別対応加算3

感染症法第6条第7項に規定する新型インフルエンザ等感染症、同条第8項に規定する指定感染症又は同条第9項に規定する新感染症の患者に対して感染対策を実施した上で歯科訪問診療を行った場合に、歯科診療特別対応加算3として500点を算定します。

歯科診療特別対応加算3を算定した場合は、病名を診療録に記載する。

2.診療時間加算

患者に対する診療時間が1時間を超えた場合は、30分またはその端数を増すごとに、100点を加算します。
患者それぞれについて算定するものであり、複数の患者に対して歯科診療を行った場合の診療時間を合算することはできません。

診療時間加算 100点

診療時間 歯訪1 歯訪2 歯訪3 歯訪4 歯訪5
60分 1,100点 410点 310点 160点 95点
61~90分 1,200点 510点 410点 260点 195点
91~120分 1,300点 610点 510点 360点 295点

3.緊急・夜間・深夜歯科訪問診療加算

別に厚生労働大臣が定める時間において、入院中の患者以外の患者に対して診療に従事しているときに、緊急の要請に応じて歯科訪問診療を行った場合に加算します。

診療を行った時間帯により、加算する点数が異なります。

保険医療機関が診療に従事している時間(概ね午前9時から午後6時までの間)に緊急の要請に応じて行う歯科訪問診療1・2・3・4・5には、それぞれ425点、159点、120点、60点、36点を加算します。この場合、緊急に行われる訪問診療の診療時間が、標榜時間内でなければ加算は算定できません。休日に訪問診療した場合には加算は算定できません。

夜間(概ね午後6時~午後10時)に緊急の要請に応じて行う歯科訪問診療1・2・3・4・5には、それぞれ850点、317点、240点、121点、72点を加算します。
深夜(概ね午後10時~翌朝6時)に緊急の要請に応じて行う歯科訪問診療1・2・3・4・5には、それぞれ1,700点、636点、481点、249点、148点を加算します。
夜間または深夜に緊急に行われる訪問診療の診療時間が、標榜時間に含まれている場合には加算は算定できません。

なお、緊急歯科訪問診療加算の対象となる緊急な場合とは、手術後の急変等が予想される場合をいいます。

緊急・夜間・深夜の訪問診療加算

加算科目と加算割合 歯訪1
(1,100点)
歯訪2
(410点)
歯訪3
(310点)
歯訪4
(160点)
歯訪5
(95点)
緊急歯科訪問診療加算 425点 159点 120点 60点 36点
夜間歯科訪問診療加算 850点 317点 240点 121点 72点
深夜歯科訪問診療加算 1,700点 636点 481点 249点 148点

4.地域医療連携体制加算

地域医療連携体制加算とは、歯科訪問診療が必要な通院困難な患者等が安心して在宅療養等が行えるよう、複数の保険医療機関により緊急時の歯科診療ができる連携体制が整備されているとともに、患者の同意を得て診療に必要な情報を他の保険医療機関の保険医等に提供及び共有すること等により、緊急時の迅速、適切な連携体制が整備されていること等を評価するものをいいます。

地域医療連携体制加算の算定には、施設基準の届出が必要です。

歯科訪問診療に基づき、当該保険医療機関が表示する診療時間以外の時間、休日又は深夜における緊急時の診療体制を確保する必要を認め、当該患者に対し、連携保険医療機関に関する情報を文書により提供し、かつ、当該患者又はその家族等の同意を得て、連携保険医療機関に対し診療状況を示す文書を添えて、当該患者に係る歯科診療に必要な情報を提供した場合に、1回に限り300点を加算します。

地域医療連携体制加算<歯地連>

点数 (1回に限り)300点
算定 当該保険医療機関が表示する診療時間以外の時間、休日又は深夜における緊急時の診療体制を確保する必要性を認め、当該患者に対し、連携保険医療機関に関する情報を文書により提供し、かつ、当該患者又はその家族等の同意を得て、連携保険医療機関に対し診療状況を示す文書を添えて、当該患者に係る歯科診療に必要な情報を提供した場合
注意点
  • 症状が急変する可能性がなくなった場合、加算を中止する
  • 病状急変時等に、連携保険医療機関の歯科医師が緊急に訪問診療を行った場合、初・再診料、歯科訪問診療料は連携保険医療機関が算定する
  • 病状急変等に対応して訪問診療を行ったこと、および診療内容を当該加算を算定する保険医療機関の主治医に速やかに報告する
  • 1人の患者につき、同一の初診で1回に限り算定する
施設基準 地域医療連携体制加算の施設基準に係る届出は別添2の様式21を用いる
診療録 患者、連携保険医療機関に提供した文書の写しを診療録に添付

5.歯科訪問診療補助加算

歯科衛生士が歯科医師と同行の上、歯科訪問診療の補助を行った場合は、歯科訪問診療補助加算を算定します。

算定する点数は、歯科医院が在宅療養支援歯科診療所、在宅療養支援歯科病院または口腔管理体制強化加算の場合か、もしくはそれ以外の場合かで異なります。

歯科医院が在宅療養支援歯科診療所、在宅療養支援歯科病院または口腔管理体制強化加算の場合で、同一建物居住者以外の場合(同一建物居住者お一人の場合)には115点、同一建物居住者の場合(同一建物居住者複数人の場合)には50点を算定します。

歯科医院が在宅療養支援歯科診療所、在宅療養支援歯科病院または口腔管理体制強化加算以外の場合で、同一建物居住者以外の場合(同一建物居住者お一人の場合)には90点、同一建物居住者の場合(同一建物居住者複数人の場合)には30点を算定します。

歯科訪問診療補助加算は、歯科衛生士が歯科訪問診療料の時間を通じて歯科訪問診療の補助を行う必要があります。同じ歯科衛生士が訪問歯科衛生指導料を行っている時間と歯科訪問診療補助加算の時間が重複することは認められません。

歯科訪問診療補助加算<訪補助>

歯援診 口管強 歯援病 その他
点数 同一建物居住者以外の場合115点
同一建物居住者の場合50点
同一建物居住者以外の場合90点
同一建物居住者の場合30点
算定する場合 歯科訪問診療を実施する保険医療機関の歯科衛生士が、歯科医師と同行の上、歯科訪問診療の補助を行った場合
(歯科衛生士が歯科訪問診療の時間を通じて、歯科訪問診療の補助を行った場合)
算定 歯科訪問診療料を算定した日
医療事務 診療録に診療の補助を行った歯科衛生士の氏名を記載
注意点 同居する同一世帯の2人以上3人以下の患者に対して訪問診療を行った場合、「歯科訪問診療1」を算定した患者には「同一建物居住者以外の場合」を算定し、「歯科訪問診療2」を算定した患者には「同一建物居住者の場合」を算定する。

6.在宅歯科医療推進加算

在宅歯科医療推進加算の算定には、施設基準の届出が必要です。

在宅歯科医療推進加算の施設基準を届け出た医療機関において、在宅において療養を行っている患者に対して歯科訪問診療を実施した場合は、在宅歯科医療推進加算として、100点を所定点数に加算します。

歯科訪問診療1を算定した日で、在宅において療養を行っている患者の場合に算定します。

在宅歯科医療推進加算<在推進>

点数 100点
対象 在宅療養患者
算定する場合 在宅において療養を行っている患者に対して歯科訪問診療を実施した場合
※診療時間が20分未満の場合は算定できない
算定 歯科訪問診療料1を算定した日
施設基準 1 在宅歯科医療推進加算に関する施設基準
(1) 歯科を標榜する診療所である保険医療機関であること。
(2) 当該保険医療機関における歯科訪問診療の月平均延べ患者数が
5人以上であり、そのうち6割以上が歯科訪問診療1を算定してい
ること。
(3) 届出前3月間の月平均延べ患者数を用いること。
2 届出に関する事項
在宅歯科医療推進加算に係る届出は、別添2の様式21 の4を用いる。

7.歯科訪問診療移行加算

当該保険医療機関の外来(歯科診療を行うものに限る。)を継続的に受診していた患者であって在宅等において療養を行っているものに対して、歯科訪問診療を実施した場合は、歯科訪問診療移行加算を算定します。

歯科訪問診療1を算定した日で、外来を最後に受診した日(初診料又は再診料を算定した日)から起算して3年以内に歯科訪問診療を実施した場合に算定します。

算定する点数は、歯科医院が口腔管理体制強化加算の場合は150点、それ以外の場合は100点です。

歯科訪問診療移行加算<訪移行>

口管強 その他
点数 150点 100点
対象 当該保険医療機関の外来(歯科診療を行うものに限る。)を継続的に受診していた在宅等療養患者
算定 歯科訪問診療料1を算定した日
ただし、外来を最後に受診した日(初診料又は再診料を算定した日)から起算して3年以内に歯科訪問診療を実施した場合に限る。
※診療時間が20分未満の場合は算定できない。
併算定不可 在宅歯科医療推進加算

8.通信画像情報活用加算

当該保険医療機関の歯科衛生士等が、過去2月以内に訪問歯科衛生指導料を算定した患者であって、当該歯科衛生指導の実施時に当該保険医療機関の歯科医師が情報通信機器を用いて口腔内の状態等を観察したものに対して、歯科訪問診療を実施した場合は、通信画像情報活用加算を算定できます。

点数 月1回に限り、30点
対象 当該保険医療機関の歯科衛生士等が、過去2月以内に訪問歯科衛生指導料を算定した患者
算定する場合 当該歯科衛生指導の実施時に当該保険医療機関の歯科医師が情報通信機器を用いて口腔内の状態等を観察したものに対して、歯科訪問診療を実施した場合
算定 歯科訪問診療1・2・3 歯訪診 特歯訪診 を算定した日

通信画像情報活用加算は、地域歯科診療支援病院歯科初診料、在宅療養支援歯科診療所1又は在宅療養支援歯科診療所2、在宅療養支援歯科病院に係る施設基準に適合するものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関が算定できます。

9.在宅医療DX情報活用加算

在宅医療DX情報活用加算は、電子資格確認等により得られる情報を踏まえて計画的な歯科医学的管理の下に、訪問して診療を行った場合に、月1回に限り8点を歯科訪問診療料に加算するものです。

点数 8点
算定 月1回に限り
算定する場合 在宅歯科医療における診療計画の作成において居宅同意取得型のオンライン資格確認等システム等、電子処方箋及び電子カルテ情報共有サービス等により取得された患者の診療情報や薬剤情報等を踏まえて計画的な歯科医学的管理の下に、訪問して診療を行った場合
併算定不可 医療情報取得加算
医療DX推進体制整備加算
施設基準 在宅患者訪問診療料(Ⅰ)の注13 及び歯科訪問診療料の注20 に規定する在宅医療DX情報活用加算

「電子資格確認等により得られる情報」とは、居宅同意取得型のオンライン資格確認等システム等、電子処方箋及び電子カルテ情報共有サービス等により取得された患者の診療情報や薬剤情報等のことです。
この加算には施設基準の届出が必要です。

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