介護事業所との連携と報酬

1.口腔衛生の管理体制

口腔衛生の管理体制とは、介護保険施設(特養、老健、介護医療院)及び特定施設のケアマネジメントの一環として、歯科医師または歯科医師の指示を受けた歯科衛生士と関連職種の共同により、口腔衛生に係る課題把握・改善を行い、入所(居)者に適した口腔清掃等を継続的に行うための体制のことを言います。

2.介護事業所が算定する口腔関連の加算

下の表にある7つの加算が、介護事業所が算定する口腔関連のものです。

このうち、歯科が協力するものは、上の4つの加算(口腔衛生管理体制加算、口腔衛生管理加算、経口移行加算、経口維持加算)です。

下の2つの加算(口腔機能向上加算、口腔・栄養スクリーニング加算)は、歯科が直接協力するということはありませんが、何か相談などがある場合には歯科医院がサポートすることがあります。

下の表に加算名と単位数、サービス、そしてそのサービスを提供する介護事業所をまとめていますので、ご確認ください。

加算 単位数 サービス 介護事業所
口腔衛生管理体制加算 30単位 認知症対応共同生活介護
地域密着型特定施設入居者生活介護
軽費老人ホーム(ケアハウス)
養護老人ホーム
有料老人ホーム
サービス付き高齢者向け住宅(一部)
グループホーム
口腔衛生管理加算 (Ⅰ) 90単位
(Ⅱ)110単位
介護福祉施設サービス
介護保健施設サービス
介護医療院サービス
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
特別養護老人ホーム(特養)
介護老人保健施設(老健)
介護医療院
経口移行加算 28単位
経口維持加算 (Ⅰ)400単位
(Ⅱ)100単位
口腔連携強化加算 50単位 訪問介護
訪問看護
訪問リハビリテーション
短期入所生活介護
短期入所療養介護
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
口腔機能向上加算 (Ⅰ)150単位
(Ⅱ)160単位
通所介護
通所リハビリテーション
地域密着型通所介護
認知症対応型通所介護
複合型サービス
デイサービス
デイケア
看護小規模多機能型居宅介護
口腔・栄養スクリーニング加算 (Ⅰ) 20単位
(Ⅱ)  5単位
通所介護
通所リハビリテーション
特定施設入居者生活介護
地域密着型通所介護
認知症対応型通所介護
小規模多機能型居宅介護
認知症対応型共同生活介護
地域密着型特定施設入居者生活介護
複合型サービス
デイサービス
デイケア
軽費老人ホーム(ケアハウス)
養護老人ホーム
有料老人ホーム
サービス付き高齢者向住宅(一部)
グループホーム
看護小規模多機能型居宅介護

3.口腔関連の加算と歯科の協力

介護事業所が算定する口腔関連の加算には、歯科医師や歯科衛生士の協力が必要なものがあります。
しかし、歯科医院が介護事業所の加算のために協力を行っても、診療報酬や介護報酬で算定できるものはありません。

多くの歯科医院は、介護事業所との連携をはかるために、これらの加算のための協力を行っています。

口腔関連の加算と歯科の協力

加算 歯科の協力
口腔衛生管理体制加算 歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、介護職員に対する口腔ケアに係る技術的助言及び指導を月1回以上行う

口腔衛生管理加算 歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が施設の入所者に対して口腔衛生の管理を行い、当該入所者に係る口腔清掃等について介護職員へ具体的な技術的助言及び指導を月2回以上行う

経口移行加算 多職種の者と共同して、経口による食事の摂取を進めるための栄養管理の方法等を示した経口移行計画を作成する

経口維持加算 多職種の者と共同して、入所者の栄養管理をするための食事の観察及び会議等を月1回以上行い、入所者ごとに、経口による継続的な食事の摂取を進めるための経口維持計画を作成する

4.口腔衛生管理体制加算

口腔衛生管理体制加算は、歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、施設の職員に対して口腔ケアに係る技術的助言・マネジメントを行います。これらは、月1回以上行うことになっています。

その指導を受けた職員が、口腔関連のサービス、日常の口腔ケアを行います。

口腔衛生管理体制加算を算定できるのは、特定施設(軽費老人ホーム/養護老人ホーム/有料老人ホーム/サービス付き高齢者向住宅)と認知症対応型共同生活介護(グループホーム)です。

口腔衛生管理体制加算

口腔衛生管理体制加算

単位数 入所者ごとに 1月につき30単位
算定するケース 歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、介護職員に対する口腔ケアに係る技術的助言及び指導を月1回以上行っている場合
書類 入所者の口腔ケア・マネジメントに係る計画
ポイント
  • 「口腔ケアに係る技術的助言及び指導」とは、当該施設において日常的な口腔ケアの実施にあたり必要と思われる事項に係る技術的助言及び指導のことをいうものであって、個々の利用者の口腔ケア計画をいうものではない。
  • 「口腔ケアに係る技術的助言及び指導」は、テレビ電話装置等を活用して行うことができる。
  • 医療保険において歯科訪問診療料又は訪問歯科衛生指導料が算定された日の属する月であっても口腔衛生管理体制加算を算定できるが、介護職員に対する口腔ケアに係る技術的助言及び指導又は入所者の口腔ケア・マネジメントに係る計画に関する技術的助言及び指導を行うにあたっては、歯科訪問診療又は訪問歯科衛生指導の実施時間以外の時間帯に行うこと。

5.口腔衛生管理加算

口腔衛生管理加算は、特別養護老人ホーム(特養)、介護保健施設(老健)、介護医療院、地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護が算定できるものです。

口腔衛生管理加算

口腔衛生管理加算には、口腔衛生管理加算(Ⅰ)と口腔衛生管理加算(Ⅱ)がありますが、いずれか一方しか算定できません。

単位数 イ 口腔衛生管理加算(Ⅰ)   90単位/月
ロ 口腔衛生管理加算(Ⅱ)  110単位/月
算定するケース 歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が施設の入所者に対して口腔衛生の管理を行い、当該入所者に係る口腔清掃等について介護職員へ具体的な技術的助言及び指導をした場合において、当該入所者ごとに算定する。
基準 イ 口腔衛生管理加算(Ⅰ)
次に掲げる基準のいずれにも適合すること。
⑴ 歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士の技術的助言及び指導に基づき、入所者の口腔衛生等の管理に係る計画が作成されていること。
⑵ 歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、入所者に対し、口腔衛生等の管理を月二回以上行うこと。
⑶ 歯科衛生士が、⑴における入所者に係る口腔衛生等の管理について、介護職員に対し、具体的な技術的助言及び指導を行うこと。
⑷ 歯科衛生士が、⑴における入所者の口腔に関する介護職員からの相談等に必要に応じ対応すること。
⑸ 定員超過利用、人員基準欠如に該当していないこと。

ロ 口腔衛生管理加算(Ⅱ)
次に掲げる基準のいずれにも適合すること。
⑴ イ⑴から⑸までに掲げる基準のいずれにも適合すること。
⑵ 入所者ごとの口腔衛生等の管理に係る計画の内容等の情報を厚生労働省に提出し、口腔衛生の管理の実施に当たって、当該情報その他口腔衛生の管理の適切かつ有効な実施のために必要な情報を活用していること。

書類 口腔衛生管理加算 様式(実施計画と実施記録)
注意点
  • 当該サービスを実施する同一月内において医療保険による訪問歯科衛生指導の実施の有無を入所者又はその家族等に確認するとともに、当該サービスについて説明し、その提供に関する同意を得た上で行うこと。
  • 歯科衛生士は、介護職員から当該入所者の口腔に関する相談等に必要に応じて対応するとともに、当該入所者の口腔の状態により医療保険における対応が必要となる場合には、適切な歯科医療サービスが提供されるよう当該歯科医師及び当該施設への情報提供を行うこと。
  • 厚生労働省への情報の提出については、LIFEを用いて行うこと。
算定不可 同一月に訪問歯科衛生指導料が3回以上(緩和ケアを実施する者の場合は、7回以上)算定された場合

6.経口移行加算

経口移行加算は、特別養護老人ホーム(特養)、介護保健施設(老健)、介護医療院、地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護が算定するものです。

単位数 1日につき  28単位
対象患者 現に経管により食事を摂取している入所者
算定するケース 次の2つの条件を満たす場合

  • 医師の指示に基づき、医師、歯科医師、管理栄養士、看護師、介護支援専門員その他の職種の者が共同して、現に経管により食事を摂取している入所者ごとに経口による食事の摂取を進めるための経口移行計画を作成している
  • 経口移行計画に従い、医師の指示を受けた管理栄養士又は栄養士による栄養管理及び言語聴覚士又は看護職員による支援が行われた
算定不可 栄養管理について別に厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合
算定期間 経口移行計画が作成された日から起算して180日以内の期間に限る
その他 経口による食事の摂取を進めるための経口移行計画に基づき、管理栄養士又は栄養士が行う栄養管理及び言語聴覚士又は看護職員が行う支援が、当該計画が作成された日から起算して180日を超えた期間に行われた場合であっても、経口による食事の摂取が一部可能な者であって、医師の指示に基づき継続して経口による食事の摂取を進めるための栄養管理及び支援が必要とされるものに対しては、引き続き当該加算を算定できる。
書類 栄養ケア・経口移行・経口維持計画書

7.経口維持加算

経口維持加算は、特別養護老人ホーム(特養)、介護保健施設(老健)、介護医療院、地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護が算定するものです。

経口維持加算(Ⅰ)

単位数 1月につき  400単位
対象患者 現に経口により食事を摂取する者であって、摂食機能障害を有し、誤嚥が認められる入所者
算定するケース 次の2つの条件を満たす場合

  • 医師又は歯科医師の指示に基づき、医師、歯科医師、管理栄養士、看護師、介護支援専門員その他の職種の者が共同して、入所者の栄養管理をするための食事の観察及び会議*等を行い、入所者ごとに、経口による継続的な食事の摂取を進めるための経口維持計画を作成している  (*テレビ会議可)
  • 当該計画に従い、医師又は歯科医師の指示(歯科医師が指示を行う場合にあっては、当該指示を受ける管理栄養士等が医師の指導を受けている場合に限る。)を受けた管理栄養士又は栄養士が、栄養管理を行った
算定不可
  1. 経口移行加算を算定している場合
  2. 栄養管理について別に厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合
書類 栄養ケア・経口移行・経口維持計画書 

経口維持加算(Ⅱ)

単位数 1月につき  100単位
算定するケース 次の2つの条件を満たす場合

  • 協力歯科医療機関を定めている施設が、経口維持加算(Ⅰ)を算定している
  • 入所者の経口による継続的な食事の摂取を支援するための食事の観察及び会議等に、医師(施設※3の人員、設備及び運営に関する基準に規定する医師を除く。)、歯科医師、歯科衛生士又は言語聴覚士が加わった

口腔関連の加算に協力的な歯科医院を探すには>>>訪問歯科ネット

適切な保険請求を行うための 訪問歯科 医療事務Q&A集 2024年改定対応

保険請求の不安を解消

訪問診療における医療事務、保険請求の疑問や不安が解決できる!

最新の医療・介護保険に対応した全159項目の疑問と回答を簡潔にまとめた小冊子です。

内容を見る

Copyright©Nihon Houmonshika Kyokai All Rights Reserved.