採算は合うのか
これらから訪問診療を始めようとされる方からのご質問に多いのが「果たして訪問診療を始めても採算が合うのか」というものです。
歯科医師が院長お一人の医院では、訪問診療の時間は医院を閉めて出かけるわけですから、その時間の外来は診ることができなくなります。これが採算に合うのかという不安につながる訳です。
採算ということを考えるには、どれだけの投資・費用がかかり、どれだけの収入が見込めるかということがポイントになります。
訪問診療のための投資と費用
訪問診療をおこなうにあたり新たに必要となるものは、移動のための車両と治療に必要な医療機材です。車両は通常使われているものがあれば新たに購入する必要はありません。医療機材は外来で使っているものと同じですが、ポータブルユニットは必要になります。7年ローンなら1月に1万円以下で導入できます。
ポータブルユニットは、診療所のユニットが故障した場合などのバックアップ機材としても使えますので1台は欲しいところです。
外来と訪問の報酬の比較
治療内容によって若干の違いはありますが、外来と訪問では同じ治療をおこなった場合、外来に比べ訪問の方が概ね3倍高くなります。最も多い義歯不適合による修理のシミュレーションでは4倍近くも高くなります。
つまり、訪問1人を診る時間が外来4人を診る時間と同じくらいなら十分採算が合うことになるので、1人の歯科医師が1時間平均で4人超えていない場合には十分に採算が取れるはずです。
訪問診療で特有の保険点数
外来の場合では算定することはないが、訪問歯科では算定する、または算定することが多い点数の項目は全て合わせても21項目だけです。
医療保険
- 歯科訪問診療料
- 診療時間加算
- 歯科診療特別対応加算
- 緊急・夜間・深夜歯科訪問診療加算
- 地域医療連携体制加算
- 歯科訪問診療補助加算
- 在宅歯科医療推進加算
- 歯科訪問診療移行加算
- 通信画像情報活用加算
- 在宅医療DX情報活用加算
- 訪問歯科衛生指導料
- 複数名訪問歯科衛生指導加算
- 歯科疾患在宅療養管理料
- 文書提供加算
- 在宅総合医療管理加算
- 在宅歯科医療連携加算
- 在宅歯科医療情報連携加算
- 在宅患者歯科治療時医療管理料
- 在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料
- 口腔管理体制強化加算
- 在宅療養支援歯科診療所加算
- 在宅療養支援歯科病院加算
- 在宅歯科医療連携加算
- 在宅歯科医療情報連携加算
- 小児在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料
- 口腔管理体制強化加算
- 在宅療養支援歯科診療所加算
- 在宅療養支援歯科病院加算
- 小児在宅歯科医療連携加算
- 在宅歯科医療情報連携加算
- 在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料
- 在宅患者連携指導料
- 在宅患者緊急時等カンファレンス料
- 周術期等口腔機能管理計画策定料
- 周術期等口腔機能管理料(Ⅰ)・(Ⅱ)・(Ⅲ)・(Ⅳ)
- 回復期等口腔機能管理計画策定料
- 回復期等口腔機能管理料
- 根面う蝕管理料
- 診療情報提供料
- 電子的診療情報評価料
- 診療情報等連携共有料
- 連携強化診療情報提供料
- 退院時共同指導料
- 摂食機能療法
- 歯科口腔リハビリテーション料3
- 在宅等療養患者専門的口腔衛生処置
- 周術期等専門的口腔衛生処置
- 回復期等専門的口腔衛生処置
- 歯科訪問診療料を算定した際の特定の点数への加算
- 著しく歯科診療が困難な者の特掲診療料にかかる加算
- 歯科医師居宅療養管理指導費
- 歯科医師介護予防居宅療養管理指導費
- 歯科衛生士等居宅療養管理指導費
- 歯科衛生士等介護予防居宅療養管理指導費
介護保険
医院の採算性を検討するポイント
ご自身の医院の状況や、訪問診療をおこなう地理的範囲、対象となる訪問先が施設か在宅かによって採算性を検討する課題が違ってくるので一概には言えません。訪問診療を始めたことにより全体の収入が下がるというのは、ほとんどが1件の訪問に対する移動時間が長すぎる場合です。そのため、医院から片道20分圏内が訪問エリアとしては好ましいでしょう。実際に計算をするには、実働1時間当たりの収入を医院の過去3年間のデータから、総外来時間と延べ患者様数を算出し、1時間あたりの収入をベースにして検討されるとよいでしょう。
もっと詳しく訪問歯科の報酬を知る
訪問診療に関する診療報酬等の保険の知識を、実務に即した切り口で整理した「訪問歯科 診療報酬研究室」をご覧ください。