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- 2012.09
【ヒューマンライフケア武南】(埼玉県川口市)が行った『お口の健康相談会』では、利用者様の口腔ケアの意識が向上すると同時に、「訪問歯科診療」の存在を多くの方に知っていただくきっかけにもなりました。
相談会で自分のお口の状態を知り、口腔ケアも前向きに
以前から口腔ケアには興味がありましたが、職員の体制や時間的なこともあり、十分に取り組めない状態でした。2012年4月の法改正にあたり、新しいプログラムを導入したいと考え、それならば口腔ケアの時間を新たに設けようかと検討していました。そんなときに、日本訪問歯科協会からタイミングよくお話をいただき、利用者様に興味をもっていただくきっかけとして、『お口の健康相談会』を実施しました。
歯磨きのために洗面所に歩いていくことも運動 『お口の健康相談会』に来てくださった歯医者さんは、口腔ケアのやり方をジョークも交えてわかりやすく説明してくださり、とても楽しい相談会になりました。相談会の結果は、先生が利用者様の目線に立ったわかりやすい文書にして、お一人お一人の報告書を作成してくださいました。お口の中はなかなか自分では見ることができませが、口腔内の写真もつけてくださったので、自分のお口が今どういう状態なのか、利用者様もご家族の方も様子がよくわかったと思います。
歯医者さんからいろいろとアドバイスをいただいたこともあって、デイサービスにいらしたときも積極的に歯磨きをするようになり、利用者様の意識が変わったことを実感しています。また、ご自宅でも、座ってばかりいた方が歯を磨くために洗面所まで歩くようになり、それがよい運動になっているようだというお話を伺い、相談会はご家族の方からも高い評価をいただいております。 職員向け勉強会で意識も技術も向上 『お口の健康相談会』の後、いちばん多かった感想は、「歯医者さんが自分の家に来てくれるなんて知らなかった」ということ。利用者様の9割以上、ご家族の方も大半は、訪問歯科診療があることをご存じなかったようでした。
「本当は歯医者さんに行きたかったけれどあきらめていた」という声も多く聞かれ、みなさん興味をもっているようでした。
また、『お口の健康相談会』の前に、職員向けの勉強会も実施したことで、口腔ケア関わる知識や技術の向上につながったと思います。中にはもっと勉強したいということで、休日返上で他の勉強会に足を運んでいるスタッフもいます。
今回は、日本訪問歯科協会の担当者にもいろいろご協力いただいて、有意義な勉強会・相談会になりました。ぜひ今後も定期的に続けていきたいと思います。
経管栄養中の口腔ケア口や鼻、胃ろうや腸ろうなど、管を通して経管栄養をしている場合、口から食べていなければ口腔内は汚れていないだろうから、口腔ケアは必要ないと思われがちです。
けれどもそれは大間違い。経管栄養中は口で咀嚼をしないために、唾液の分泌が減って自浄作用が低下し、かえって汚れがつきやすい状態になっています。口の中にはもともとたくさんの細菌がいますし、痰などと絡み合って口臭の原因になります。
また、口で食べない状態が長く続くと、咀嚼や嚥下機能の低下や管の汚染などから、誤嚥性肺炎にかかるリスクも高まります。
口の中をきれいにすることだけでなく、唾液の分泌を促したり、口の周りの筋肉を刺激して機能を低下させないためにも、経管栄養中も口腔ケアが必要なのです。
●注意点
・刺激による嘔吐や嘔吐物の誤嚥を避けるために、栄養注入直後は避け、空腹時に口腔ケアを行うようにします。
・誤嚥を防ぐために、座位の場合は前かがみ、寝たきりの場合は横向きで行います。
・栄養チューブが抜けないように、テープで固定してていねいに行いましょう。
発行/SOSデンティスト 一般社団法人 日本訪問歯科協会
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