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- 2011.12
【デイサービスセンター内の川】(和歌山県)では、『お口の健康相談会』で紹介された入れ歯用歯ブラシをきっかけに、利用者様の食後の歯磨き率がぐんとアップしました。
口腔ケアの大切さを歯科と内科の連携でもっと広く伝えて欲しい
相談会がもたらしたさまざまなよい変化
『お口の健康相談会』を実施する以前は、私どものセンターの口腔ケアと言えば食後のうがいくらい、あとは自主的に歯磨きなどをやる方もいる、という感じで、ほぼやっていないに等しいような状態でした。
それが相談会を行ったあとでは、ご利用者様に変化が見られました。
『お口の健康相談会』の当日、見慣れない先生がやってきたので最初のうちは少し緊張していた利用者様もいらっしゃいましたが、先生がやさしく、大きな声でわかりやすく話してくださったので、緊張もとけたようで、先生にいろいろ質問していました。普段はそんなにしゃべらない方も先生に質問していて、いつもとはちがう一面を見ることができました。
また、先生が参加した利用者様全員に入れ歯用の歯ブラシをくださったのですが、それが使いやすくてとても評判がよいのです。便利な器具があるとお手入れが楽しくなるのか、食後に入れ歯をはずして自主的にお手入れをする利用者様がとても増えました。
以前は面倒くさがってやらなかった方も、まわりで他の人がやっているのを見て「それならば私も」とやり始め、連鎖反応で広がっていきました。
口腔ケアを行う人が増えたのはとても喜ばしいことですが、それだけでなく、「他の人がやっているのを見て自分もやる」というように、他の人に関心をもち、関わりをもつよい機会にもなったと感じています。 ご家族の方にもっと興味をもっていただくために
『お口の健康相談会』の実施に当たって、利用者様のご家族の方には事前にお知らせしたところ、「やっていただけるならありがたい」という反応が多かったです。
『相談会』の結果を、先生が一人ずつ書面にまとめてくださったので、それをご家族の方にもお渡ししました。うちとしては利用者様の状態がわかる記録をいただけて、とてもありがたいと思っていますが、正直、それに対するご家族の方の反応や感想はあまりこちらには届いていません。
やはり、お口の健康状態や口腔ケアについてのご家族の方の関心はまだそれほど高くはないのだと思います。
口腔ケアの重要性については、歯科の先生方が積極的に啓発していますが、歯科だけでなく、内科の先生ももっと話をしてくださったらいいのに、と私は思っています。歯科の先生だけだと、「歯医者さんだからそんなこと言うんでしょ」という思う方もいるようなのです。
実際に、口腔ケアと誤嚥性肺炎には深い関連があるわけですし、歯科と内科が連携して、もっと皆さんに広く伝わればよいと思います。
入院前の口腔ケア入院中や手術後の合併症を予防するためにも、口腔ケアでお口の状態をきれいにしておくことはとても重要です。
【汚れたお口の悪影響】
●呼吸器の病気(肺炎)
人工呼吸器をつけるために気管に管を入れるとき、細菌を含む唾液が肺に入ると、「人工呼吸器関連肺炎」が起こりやすくなります。
●心臓や血管の病気(心内膜炎)
口の中の細菌が血液の流れによって全身をめぐり心臓に付着すると、心臓の内膜や弁に感染症が起こる「心内膜炎」を発症することがあります。
●臓器の感染症(菌血症)
免疫力が低下していると、口の中の細菌が原因で、さまざまな臓器に感染を起こす可能性があります。
●むし歯や歯周病の進行
手術や薬の影響で唾液が減少すると、口の中に細菌が繁殖しやすくなり、むし歯や歯周病が進行することもあります。
入院日が決まったら、その準備として、歯医者さんでお口の状態を確認しましょう。歯垢や歯石を取ったり、ぐらぐらしている歯を固定したり、口腔ケアを受けましょう。
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