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- 2010.12
社会福祉法人砂沼会特別養護老人ホーム【愛宕園】(茨城県) では、日本訪問歯科協会による口腔ケアの勉強会がきっかけと なり、口腔ケアに関する取り組みの姿勢が大きく変わって、入居者様の肺炎が激減しました。
口腔ケアのスキルアップで入居者様の肺炎がゼロに!
口腔ケアの勉強会では、知っているつもりで知らなかった発見がいろいろありました。たとえば、入れ歯のお手入れ。総入れ歯も部分入れ歯も、洗浄剤に入れておけばヌルヌルが取れてきれいになるだろうと、毎日はずしたら当たり前のように洗浄剤に浸けていました。けれども、部分入れ歯の金具には洗浄剤はあまりよくないことなどを先生から聞いてみんなびっくり。確かに洗浄剤の細かい説明書きなどはちゃんと読んでいなかったと反省。先生からブラッシングなどのお手入れ方法を教えていただき、洗浄剤に頼らなくなったら、入れ歯もきれいになったし、洗浄剤の経費が減った分、経済的にも助かっています。
口腔ケアのコツをつかんで短時間でもていねいなケア 外部の講習会に参加することはありましたが、施設内で勉強会を開いたことで、すべての職員がお話を聞くことができたのがとてもよかったと思います。それによって、みんなが同じ意識で口腔ケアに関心をもつことができました。介護の仕事は時間に追われることが多く、お恥ずかしい話ですが、お口のケアは大切だとわかっていても、これまではある程度できていればいいや、という考えが職員にあったと思います。時間がない、人手が足りない、入居者の方も嫌がる…、いろいろなことを言い訳にしていたのかもしれません。
けれども、勉強会で口腔ケアのコツを学び、また、『お口の健康相談会』も行って、お一人一人のお口の状態も把握できるようになりました。今では、個々で重点を置くべきポイントがつかめたので、以前より短時間でもむしろていねいにケアできるようになりました。
重篤者のプラークもきれいに取れましたし、どんな消臭剤でも改善されなかったお部屋の臭いが、口臭がなくなったことですっかり気にならなくなりました。 職員同士が競い合ってスキルアップを心がける 当施設では、口腔ケアを徹底するようになって明らかに肺炎を起こす方が減ってきています。食後も以前なら食べたらすぐに横になるということもありましたが、今はしばらく座位で口腔ケアを行いますので、それによって誤嚥も減り、誤嚥性肺炎を繰り返していた方も、最近は肺炎にかからなくなっています。
口腔ケアが全身の健康の維持につながると身をもって体験し、職員の意識もますます高まっています。ケアは職員がローテーションで行うため、あの人は上手、あの人は下手と入居者様に言われないように、職員同士の競い合いといいますが、みんながスキルアップを心がけています。
勉強会を開いたことは、入居者様の健康面、職員の意識面など、すべてにおいていい結果に結びついていると実感しています。
入れ歯の方の食事の注意点入れ歯が合わなかったり、痛みがあったりすると、食事をおいしく味わって食べることに支障を来し、食欲不振や栄養不足の原因にも成ります。
入れ歯がはずれやすいとよく噛んで食べることができませんし、1本義歯など部分入れ歯でははずれて飲み込んでしまう事故も起こりますので、定期的に入れ歯の定期検診をして調節が大切です。
また、噛みやすいように食事も工夫しましょう。
●食材の大きさ
小さめに切ったり隠し包丁を入れたりして噛み切りやすくなる工夫を。ただし、薄すぎるとかえって噛み切りにくくなります。また、みじ
ん切りなど細かすぎるのも、口の中でまとまらず飲み込みにくくなったり、入れ歯と粘膜の間に入り込んだりするので不向きです。
●食べ物の硬さ
総入れ歯では硬いものを前歯で噛むと外れやすくなり、粘膜も傷つきやすくなるので、噛み切りやすい硬さに煮るなど工夫します。
●食べ物の温度
総入れ歯の場合は、上顎で温度を感じにくくなっています。熱すぎる食べ物はやけどしやすくなるので、温度には注意しましょう。
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