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- 2010.01
東京の足立区、北区、荒川区エリアで病院・診療所や介護施設、 居宅介護支援事業を展開する【東京ほくと医療生活協同組 合】。その中の一つ、荒川生協診療所(東京都荒川区)では、高齢 者のQOL(生活の質)の向上のためにも、口腔ケアや訪問歯 科診療に注目しています。
訪問歯科診療のメリットはその人の生活を知って治療できること
東京ほくと医療生活協同組合では、地域の人々の健康や暮らしを守るためのさまざまな取り組みを行っています。
私は理学療法士として、荒川生協診療所で通所リハビリを担当しています。利用者様の体の状態に合わせてリハビリテーションを行い、利用者様やご家族と相談しながら機能回復の計画を立てていきます。
リハビリすることで、ADL(日常生活動作)は向上し、生活もよりよく変化していきますが、ADLと口腔ケアも無関係ではありません。
口の中の細菌から誤嚥性肺炎にかかったり、お口のトラブルでしっかり食べられずに栄養状態が悪くなったりしますし、入れ歯の状態で言葉がうまく出たり出なかったりということもあります。口腔ケアの必要性を重視し、当施設では以前から食後の口腔ケアを行っていました。
実は、東京ほくと医療生活協同組合にも歯科診療所があり、訪問歯科診療も行っています。けれども、北区の王子で少し遠いため、荒川区の方にとっては利用しづらい状況でした。また、ほかの歯医者さんの往診を受けている方もいらっしゃいましたが、あまり満足していないとのことでしたので、日本訪問歯科協会の『お口の健康相談』をやってみることにしました。
協会から紹介された歯医者さんは利用者様から好評で、わざわざここに来て、お口の状態を診てくれて、わかりやすく説明してくれたことをとても喜んでいました。すぐに訪問歯科診療をお願いした方もいらっしゃいます。 一人ひとりが自立した生活を送るために 食べることは生活の中心ですし、人と話をしてコミュニケーションをとることも大切で、口腔機能の個々の生活に大きく関わってきます。
訪問歯科診療の最大のメリットは、その方の生活の場に入って治療をすることでしょう。お家に伺うことで、通院ではわからないその方の生活を知り、それに合わせた適切な治療ができるので、訪問歯科診療には期待しています。
リハビリテーションも個々の生活を重視します。本人のやる気とご家族の協力があれば、高齢の方でもリハビリによって生活が好転する可能性は大いにあります。
口腔ケア然り、リハビリ然り、利用者様一人ひとりが自立した生活を送ることができ、家に閉じこもらず、寝たきりにならず、自分がやりたいことができるようなサポートを続けていきたいと思います。
感染症をもつ人の口腔ケア口の中にはたくさんの細菌が繁殖していますが、感染力は弱いので、口腔ケアの際に健康な介護者が唾液や血液に触れても、洗い流せば細菌も落ち、健康に悪影響を及ぼすことはほとんどありません。
B型肝炎やC型肝炎、HIV(エイズ)、結核などに感染している人の介護を行うときは、感染予防のための注意が必要ですが、正しい知識をもって接すれば、むやみにおそれなくても大丈夫です。
唾液や血液中の細菌やウイルスは、主に傷口などから体内に侵入しますが、皮膚が健康ならば洗い流せば落ちます。口腔ケアでは指をかまれて傷を負うこともあるかもしれないので、使い捨ての手袋を使用しましょう。ケアが終わったら手袋を捨て、石けんを使って手と指をていねいに洗います。
歯ブラシは流水でよく洗い、水を切って乾燥させ、ときどき熱湯をかけて消毒します。コップや受け皿なども清潔にしておきましょう。
感染症をもつ人は免疫力が落ちていて、ほかの感染症にもかかりやすいので、介護者からうつすことがないよう、感染予防を徹底させましょう。
発行/SOSデンティスト 一般社団法人 日本訪問歯科協会
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