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- 2008.07
医療法人育心会「愛知クリニック デイサービスセンター」では、口腔ケアを通じて、利用者様やご家族と職員のコミュニケーションが深まったことを実感しています。
口腔ケアで深まった利用者様やご家族とのコミュニケーション
少しでも長く、自分のお口でおいしく食事ができるように
私たちの施設は、明るさがモットー。職員も利用者様も、大きな声を元気にかけ合います。大きな声を出すのは、肺の機能を高めたり、嚥下の機能低下を防いだりする効果があるからです。
そういうことはずっとやってきていましたが、本格的な口腔ケアをまだ導入していなかった頃、口腔機能向上サービスが加算対象になったこともあり、何かよりよいサービスができないものかと、情報を集めていました。
そんなときに日本訪問歯科協会と出会い、当施設の口腔ケアサービスの方針がかたまっていきました。
まず行ったのは、歯科の先生による「お口の健康相談」です。うちの看護師などのスタッフも立ち合って利用者様のお口の状態を把握し、先生のご意見を参考にしながら、一人ひとりに合った口腔ケアの計画を立てました。
ご家族の方にも、利用者様のお口の状態を知っていただくために、しっかりと説明しました。こうしたことで、利用者様もご家族も、口腔ケアに対する意識が非常に高まっていきました。
デイサービスで、食後に歯磨きをしたら、磨き残しがないかどうかスタッフがチェックするのですが、「今日は歯磨きはまだ?」「早くチェックして」と利用者様から声がかかることもあります。ご家族からも口腔ケアの質問や相談が看護師に寄せられ、口腔ケアを通じて、スタッフと利用者様やご家族とのコミュニケーションが深まったと感じています。
うちは病院も併設しているので、利用者様には重症の方も多いため、少しでも長く、ご自分のお口で食事をおいしく召し上がっていただくにはどうしたらよいかということを常に考え、スタッフ一同、取り組んでいます。
そして、利用者様もがんばって取り組んでいるので、次のお口の健康相談では、その成果をぜひ先生に見ていただきたいと思います。(水野さん) 食べる→歯磨き→チェックの一連の流れが自然に
お口の健康相談以降、利用者様にもご家族にも、いろいろな変化が見られました。
歯科の先生にご指摘を受けたことで、「やらなければいけないんだ」と実感されたようです。義歯を交換された方もいますし、利用
者様の状態に合わせて、ご家族の方がローリングブラシや電動ブラシなどの口腔ケアグッズを持たせてくれることもあります。
また、食べたら歯を磨き、入れ歯も磨き、スタッフのチェックを受けて、自分の席に戻るという一連の流れが、利用者様にも身についてきています。
歯科は、内科や外科とは分野が違うので、私たちも勝手がわからないところもあります。これからも、お口の健康相談や勉強会を継続的に行って、もっと技術と知識を身につけたいと思います。
(小島さん)
食べる楽しみ生きる意欲<1>食べることは、ただ体に栄養を補給するだけではありません。「おいしかった」「お腹がいっぱいになった」という満足感が得られると、体が元気になるとともに、気持ちも明るくなってきます。
「おいしさ」とは、味、香り、食感(歯ごたえ、舌ざわり、口あたりなど)、見た目、噛む音など、五感を使って感じるものです。
さらに、気のおけない人たちと会話を楽しみながら食べるという付加価値があれば、食べる楽しみはさらにふくらみます。
楽しんで食べると、心の満足度が増して、消化吸収が良くなるとも言われています。そのためには、家族や友人などと会話を弾ませながら食べられるような、楽しい雰囲気づくりも大切です。
高齢者の食事は、自分の口でおいしさを感じながら食べることが大切です。それが楽しみとなり、生きる意欲を高めて、若々しい生活をもたらしてくれるのです。
発行/SOSデンティスト 一般社団法人 日本訪問歯科協会
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