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- 2008.05
特別養護老人ホーム「アイリスコート」では、お口の状態の改善だけでない、口腔ケアの大きな手応えを感じています。
お口の健康が心と体の健康につながる
私たち『アイリスコート』では、日本訪問歯科協会の協力で、定期的に勉強会を行っています。勉強会でいろいろな知識を得るうちに、職員の意識が大きく変わりました。
以前は、口腔ケアも「業務の一つ」という位置づけでしたが、今では毎食後の歯磨きの時間は、職員と利用者様との貴重なコミュニケーションのひとときだと感じています。また、「口腔ケアが健康の入口」と、強く意識をして取り組むようになりました。
以前も、必要に応じて一般の歯医者さんに来ていただいていましたが、「レントゲンが撮れないし、通院しないと治療も限界がある」と言われていました。
けれども、日本訪問歯科協会加盟の歯医者さんは、専用の往診車で来て、車内でレントゲンも撮れ、通院と変わらない治療をしてくださいます。先生もやさしくて、利用者様のペースに合わせて対応してくださるので、利用者さまやご家族の方からとても好評です。
そして、症状の改善だけでない、プラスαの効果もいろいろありました。
たとえば、ある利用者様は、1日中無表情でテレビを見ていて、人と話をすることはほとんどありませんでした。ところが、歯槽膿漏が悪化して訪問診療を受け始めたら、「今日は歯医者の日だね」と往診を楽しみにして、表情も明るくなり、積極的に話をするようになりました。
また、胃ろうの利用者様のケースでは、「歯医者さんに行けないから」とあきらめて、ゆるくてすぐに落ちてしまう入れ歯を我慢していらしたのですが、訪問診療で入れ歯を新調しました。
そして、お口の状態がよくなったので、口から食べることに切り替え、ミキサー食から主食をお粥にし、おかずもペーストから刻み食へと、徐々に変えることに成功。数日前に、お粥から普通のごはんにしたところ、「これはうまい!」と喜んで、一粒残さず召し上がってくださいました。もともと食欲のある方なので、自分のお口で食べる楽しみが増え、車椅子で行動する範囲も広くなりました。
このように、お口の健康が心や体の健康につながることを、日々実感しています。 お口の体操の効果に期待 昼食と夕食の前には、勉強会で習った「パタカラ」や協会オリジナルの「ギュウドン」など、お口の体操を行っています。
体操が発語や嚥下機能の回復につながることに期待しているのですが、積極的に体操をしているのは、嚥下に問題のない元気な方ばかり。嚥下の状態がよくない方の中には、大きな声を出せない方もいるので、そういう方にもやっていただける方法がないかということが、目下の悩みのたねです。
そうしたことも、今後の勉強会でアドバイスしていただきたいと思います。
6月4~10日は歯の衛生週間6月4日は6(む)と4(し)の語呂合わせで、「むし歯予防の日」と言われています。
また、6月4~10日までの1週間は、厚生労働省・文部科学省・日本歯科協会などが「歯の衛生週間」を実施しています。
日本は、日本人男性の平均寿命は78歳、女性は85歳と、世界一の長寿大国です。しかし、残念ながら、歯の寿命は50~60歳代で、高齢になるに従って、歯を失う人が多いのが現状です。
けれども、日頃から歯磨きなどの口腔ケアをしっかり行っていれば、歯の寿命をもっと延ばすことができます。
最近では、80歳まで20本の自分の歯を持とうという「8020運動」も提唱されています。
「歯の衛生週間」をきっかけに、歯を長生きさせるための口腔ケアを実践する習慣を身につけましょう。
発行/SOSデンティスト 一般社団法人 日本訪問歯科協会
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