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- 2007.12
お口のトラブルで思うように食べられない方をなんとかしてあ げたい…。そんな思いもあって、「デイサービスわか草」(愛知県 安城市)では、利用者様を対象とした歯科検診を実施しました。
「年だからしかたがない」とあきらめてしまうことのもどかしさ
私たち「デイサービスわか草」では、お口の機能維持・向上のために、パタカラ体操やしりとりなどの遊びは以前から取り入れていましたが、口腔ケアを本格的に取り入れるまでには至っていませんでした。
お食事の後に、歯ブラシで歯磨きをしましょうと呼びかけても、「いいわいいわ」と断られたり、お箸を楊枝代わりに歯をつついたり、面倒くさがってどうしても二の次になってしまうようです。
ある方は奥歯が痛くて噛めないからとおせんべいはお茶につけて少しふやかしてから食べていました。別の方は下の歯がなくて噛めないためにミキサー食を召し上がっています。
歯の治療をしたり、入れ歯を入れたりすれば、また噛めるようになるのに……、と私たちは思うのですが、ご本人もご家族の方も「年だからもういい」とあきらめているようなところがあって、少しもどかしさを感じていました。
デイサービスでは手を貸して高齢者のサポートをしてさしあげたほうがよい場合と、手を貸さずにご本人にやっていただいたほうがよい場合もありますし、強制することもできません。私たちがどこまで介入してよいのか、判断が難しいこともあります。
そんなときに、日本訪問歯科協会さんからのお声かけで、希望者を対象としたお口の健康相談を行いました。歯医者さんから歯のお話を伺ったり、歯科衛生士さんが入れ歯の洗い方などを教えてもらったりもしました。私たちスタッフも知らなかった話などもあって勉強になりました。
お口の健康相談の後、「往診に来てくれるのならお願いしたい」と訪問歯科診療を申し込まれた方が2名いらっしゃいます。
往診ではスケーリングをしてお口の中にたまっていた汚れを取り除き、入れ歯の調整などを行ったようです。
ある方は入れ歯を直してからずいぶん調子がよいようで、以前よりもよくおしゃべりするようになりました。
またお口の健康相談を行えば往診での治療を希望される方はもっと多いかもしれません。
日本訪問歯科協会とご縁ができ、何かあったら口腔ケアの相談に乗ってもらえるという点も心強いと思いました。
口腔ケアでQOLも向上する!お口のトラブルは、口腔ケアをしっかり行い、不具合を治療することで改善することができます。
食べることは身体的にも精神的にも、生きる喜びにつながります。食事がおいしく食べられるようになれば、気力も回復します。寝たきりでほとんど反応がない人も、口の中がきれいになればピンク色の粘膜がよみがえり、表情も明るく見えます。さらに、命をおびやかす危険がある誤嚥性肺炎の予防にもなります。
口腔ケアは健康面だけでなく、心理面への影響も大きく、高齢者のQOLを向上させる大きなカギを握っています。お口はいきいきとした高齢期を送るためにも大切な器官なのです。
口腔ケアは早く始めるに越したことはありませんが、今から始めても手遅れということはありません。
心と体の健康を維持するためにも、口腔ケアを習慣化しましょう。
発行/SOSデンティスト 一般社団法人 日本訪問歯科協会
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