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- 2007.03
特別養護老人ホーム、ショートスティ、ケアハウス、デイサービスなどを展開する「しがそせい苑」(滋賀県守山市)では、口腔ケアの可能性に大いなる期待を寄せています。
口腔ケアは心と心のふれ合いにもつながる
私たち「しがそせい苑」でも、口腔機能向上加算が介護保険に導入されることに伴い、口腔機能の勉強は独自に行っていました。
お口の機能が向上することは食べるためにプラスになるだけではありません。噛みしめる力は下肢筋力もつながりますし、コミュニケーションがうまくいくようになるなど、生活の質の向上に直接通じるので、口腔ケアの大切さは理解していましたが、何をどう実行したらよいのか、試行錯誤でした。
そんなときに、日本訪問歯科協会からの提案で、職員向けの口腔ケアの研修会と、利用者様を対象にした歯科検診を行いました。
また、歯科検診で歯医者さんに一人ひとりのお口の状態を診ていただいたことで、利用者様、そしてご家族の口腔ケアに関する意識も大きく変わったようです。
口や歯のことは年だからしかたがないと、ご本人もご家族もあきらめていたところもあったと思います。けれども、検診後に入れ歯を新しく作ったり、修理したりした人がけっこういらっしゃいましたので、よい動機付けになったようです。 口腔ケアで築く1対1の信頼関係 私たちは介護に携わる立場から、口腔ケアに期待を寄せています。
これは一つの例ですが、脳梗塞でまったく言葉が話せなくなってしまった方がいらして、主治医の先生はもう言葉の機能は回復しないとおっしゃっていました。
私たちは口腔ケアをやらせていただいていましたが、そのうちにその方が「あー」「いー」など声に出して言えるようになったので、いつか言葉の機能も回復するのではないかと願っています。
口腔ケアが直接の原因かどうかはわかりませんが、もし何かのきっかけになったのだとしたら、医療があきらめた部分を介護で補っていけるのではないかと思っています。
デイサービスのレクリエーションなどはグループ単位で行うものが多いけれど、口腔ケアのお手伝いは、1対1で向き合わなければできません。だから、コミュニケーションをとりづらい人とでも信頼関係を築きやすいのです。口腔ケアで心と心のふれ合いができるのではないかと思います。
口腔ケアQ&A<3>Q.どんな歯みがき剤が適していますか?
A.研磨剤が入っているものは歯の表面を傷つけやすいので避けた方が無難です。もし、歯みがき剤を誤って飲んでも少量ならば害になりませんが、細菌も一緒に飲み込んでしまうので気をつけましょう。誤飲を防ぐためには、あまり泡を立てずにみがきます。汚れはブラッシングで取り除くことができるので、歯みがき粉はつけなくてもかまいません。
Q.口腔ケアに適している歯ブラシは?
A.高齢者に適しているのは、毛がやわらかめで、ブラシの部分は2cm幅程度のものがおすすめ。柄はやや太めでまっすぐのものが持ちやすいようです。電動歯ブラシも便利ですが、振動が速いものは歯肉や粘膜を傷つけるおそれもあるので気をつけましょう。また、重いものは高齢者にはあまり向きません。
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