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- 2006.06
慣れ親しんだ町で、いつまでもはつらつとした暮らしができるよう に、高齢者の生活を支援する「デイサービスくるみ」(盛岡市)で は、歯科検診をきっかけに、利用者様と職員の口腔ケアの意識が変 わったことを実感しています。
歯科検診で大きく変わった利用者様と職員の意識
当センターでは、午前中は一般対応型、午後からは認知症対応型の通所介護を行っています。
皆さんに元気ではりあいのある生活をしていただくために、デイサービスでは体を動かしたレクリエーションを中心に、いろいろなイベントを取り入れて行っています。その中の一つとして、お食事の前に嚥下体操なども取り入れてきました。
4月の介護保険の改正で「口腔機能等の向上」が導入されました。当センターでも以前からデイサービスで口腔ケアを行いたいと考えていましたが、口腔ケアの知識が職員に不足していたこともあり、積極的に取り組めないでいました。
検診当日、利用者様に事前に歯磨きをしていただきました。私たちも気をつけていたのですが、いざ歯科検診が始まってみると、歯の間や頬の間に食べ物が挟まっていたり、磨き残しがあったりと、歯科の先生からさまざまなご指摘を受けました。
歯科検診は虫歯のチェックをするくらいなのかと思っていたのですが、こういう部分に気をつけて口腔ケアを行ったほうがよいと、利用者様一人ひとりに個々のアドバイスをしていただいたことが、印象に残っています。これは私たちが今後ケアをしていくときに、とても役に立つなと思いました 。 きちんと取り組めば結果が得られる デイサービスで嚥下体操を行っていたものの、利用者様の意識も、それを呼びかける職員の意識も低かったこともあり、あまり積極的にできていなかったと思います。
それが、歯科検診をした後は、歯磨きや体操に積極的でなかった利用者様が、職員が呼びかけると「そういえば、先生に磨き残しを指摘されたからやってみようかな」などの反応を示してくださるようになり、意識の変化を感じるようになりました。
また、職員にとっても、歯科検診は利用者様の口腔内の様子がわかっただけでなく、きちんと取り組めば結果が現れるし、利用者様の意識も変えられることがわかり、励みになりました。
口腔ケアのとっかかりとして歯科検診から始めたことは本当によかったと思います。検診は今後も定期的にやっていきたいと考えています。
そのうえで、今度は私たち職員がもっと口腔ケアの勉強していかなければならないと実感していますので、職員の勉強会もぜひ近いうちに実現したいと思います。
正しい口腔ケアでQOLを向上させよう!口腔ケアは、口のトラブルの予防だけではなく、食べることや話すことをサポートし、生活にリズムをつくって、QOL(生活の質)を向上させる目的もあります。
自分の口で「おいしく食べる」ことは大きな楽しみであり、生きる意欲にもつながるのです。また、脳や体も元気にします。
抵抗力がアップする唾液には汚れを落とす洗浄効果があり、抗菌物質も含まれています。口の中がきれいになれば、唾液の出もよくなり、口から入った細菌やウイルスが体内に侵入するのを防ぎます。
また、食事を口からしっかり食べられるようになれば体力もつき、抵抗力もアップします。
噛むことが老化防止になる!噛むことは脳への血流を増やし、脳の動きを活性化します。実際に、痴呆の人ほど口の中にトラブルをかかえ、咬むことができない状態が多いという報告もあります。
つまりよく噛むことで脳の若さを保ち、痴呆の予防につながると期待されています。
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