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- 2005.12
小集団の個別対応で「利用者様一人ひとりのワガママがきく施設」を めざす、デイサービスセンター【アグリン】(埼玉県所沢市)では、高 齢者の自立支援と介護家族の支援の一環として、歯科の定期検診を はじめとする口腔ケアを取り入れています。
介護予防3本柱の一つとして口腔ケアを導入
当施設では、「身体機能の改善」「栄養指導」「口腔ケア」を3本柱として介護予防に積極的に取り組んでいます。身体機能の改善は作業療法士と専門指導を受けた職員2名が担当しています。栄養指導は栄養士の資格をもつ介護士が担当し、食事も普通食・刻み食・ミキサー食など一人ひとりの状態に合わせて工夫しています。
そして口腔ケアは、日本訪問歯科協会のバックアップで、4年前から年1回の定期歯科検診を行い、希望があれば訪問歯科診療もご紹介します。
歯科検診の受診者は年々増え、一度受けたらよかったのでまた受けようというリピーターの方が多いようです。けれど、デイサービス全体の利用者数からみれば、まだ3割くらいです。さらに受診者が増えるように、定期検診や口腔ケアのメリットをもっとご家族の方にお伝えしていきたいと思います。
そのためには、口腔ケアに関する職員のスキルアップも必要だと思うので、協会にもご協力いただき、職員向けの勉強会などもぜひ実現させたいと考えています。
デイサービスでは、お食事前にレクリエーションの一環として、お口のリハビリ体操を取り入れています。また、食後はうがいを励行し、入れ歯を洗うお手伝いもします。
入れ歯と歯茎の間に薬の顆粒が1粒はさまっただけでも不快なものです。合わない、嫌だからと、入れ歯を捨ててしまう方もいるんです。ご家族の方が、「入れ歯をはめて出かけました」とお手紙を添えてくださることもあり、私もお口を気をつけて見るようにしています。
訪問歯科診療は対応が早いので助かります。ある方は、入れ歯と接する歯肉に傷ができていることが検診でわかりました。ご家族に報告したところ往診を希望されたので依頼したら、翌日には往診に来てくれたそうです。痛みで食欲が落ちていたけど、また食べられるようになったと、お礼の言葉をいただきました。電話1本でこんなに早くお口の問題が解決するなんて、ご紹介した甲斐があったとうれしくなります。
けれども、訪問歯科診療がまだあまり知られていないのが残念です。歯科の治療にはいろいろな器具が必要なので、往診でどんなふうに治療するのか想像がつかない方も多いんだと思います。
でも、実際には往診でも診療室と同じ治療が受けられる。そのあたりを協会にももっと積極的にアピールしていただきたいですね。便利だとわかれば、さらに利用される方は増えると思います。
食べやすい食事の工夫"刻み"と"とろみ"歯が弱くなり、噛む力が衰えた高齢者に、食材を細かくする「刻み食」を提供することもあるでしょう。
確かに大きさや形を変えることも飲み込みやすくなる工夫の一つです。けれども、舌の動きがあまりよくない人や飲み込みに問題がある人にとっては、刻み食は一見食べやすそうに見えても逆効果になることがあります。
食べ物は噛むことで唾液とまざりあって飲みやすくまとまりますが、刻んだ食材は口の中でまとまりにくいため、食片が口の中に残りやすくなります。それを何かの拍子に気管に吸い込んでしまい、むせや誤嚥の原因になることもあるのです。
舌の動きや飲み込みに問題がある人には、食材をやわらかく煮たり、とろみをつけたり、ムース状にしたりなど、かたさに考慮することが大切で、そのほうが細かく刻むよりも効果的
です。
高齢者一人ひとりの状態をしっかり把握して、おいしく安全に食事を楽しめる工夫をしてください。
発行/SOSデンティスト 一般社団法人 日本訪問歯科協会
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