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- 2025.01
特別養護老人ホーム「さんふじ」(青森県)では、利用者様に食事をおいしく食べることの幸せを感じていただくために、日頃から毎食後の口腔ケアに取り組んできました。『お口の健康相談会』と職員向け勉強会を実施したことで、その成果を利用者様のケアにさらに取り入れ、実践しています。
利用者様の食べる幸せのために1日3回口腔ケアを実施
社会福祉法人千栄会 特別養護老人ホーム「さんふじ」主任看護師 米村有希子さん
利用者様が幸せを感じられる大きな要素として、「食べること」は重要です。当施設では四季折々の食べ物や行事食などをご用意しており、おいしいものを食べて笑顔いっぱいになっている利用者様の姿を見ていると、私たちも幸せな気持ちになります。
そのためにも口腔ケアの重要性を念頭に置き、利用者様お一人お一人に合わせた物品の選択、1日3回の口腔ケアなど、基本的な取り組みをずっと行ってきました。 歯科医院との連携でペースト食から普通食へ
そうした中で『お口の健康相談会』を実施しました。坂本歯科クリニックの坂本先生からお一人お一人に合った細やかなアドバイスと結果の報告書をいただいたことで、利用者様の口腔内の状態を細かく把握することができました。治療が必要な状態の方もいらっしゃいましたが、報告書があったのでご家族の方にも説明しやすく、訪問歯科診療につながった方もいます。
義歯が合わずに使えないまま生活していた方は、それまでペースト食しか食べられませんでした。それが今回、治療して義歯を作り直したことで、「おせんべいだって食べられるようになった」ととても喜んでおられます。
また、残存歯のある方の口腔ケアは私たちだけでは難しかったのですが、今では歯科衛生士さんにも来てもらい、細やかなフォローをしていただいています。それが歯周病などの予防となり、よりよい連携が取れていると感じています。皆さん、ごはんがおいしく食べられるようになり、利用者様、ご家族、私たちの喜びにつながっています。 質疑応答を取り入れ実践に役立つ勉強会に
職員向けの勉強会では、スライドなどを使用して内容もわかりやすく説明していただき、口腔ケアの基本的をくわしく学ぶことができました。先生から低コストで使いやすい歯ブラシなどのグッズを紹介していただき、実践に生かしています。
勉強会の終わりに、利用者様の個々の口腔ケアに対するたくさんの質問が出て、悩みを相談することもできました。今後は、勉強会と、私たちが伺いたい内容を事前に提出して答えていただく質問コーナーのセットで行うことができたら、個々の利用者様の特性に合った日々の口腔ケアにさらに役立てるのではないかと期待しています。
お餅を安全に食べる工夫お餅は高齢者の好物ですが、誤嚥による窒息の心配がある食べ物でもあります。
普段は食べることを控えていても、お正月くらいはお餅を楽しみたいということもあるでしょう。摂食嚥下機能に問題がないことが大前提ですが、のどに詰まらせにくい食べ方を工夫するとよいでしょう。
お餅はできるだけ小さく切り、食べる前にはお茶などで口腔内をしっかりと潤しておきます。お餅を口の中に入れたら、ゆっくりとよく噛んでから飲み込むようにします。食事の介助が必要な場合も、よく噛むことを促して、?んでいるのを確認してから飲み込んでもらいます。食べている時は会話をせずに、お餅を食べることに集中することも大切です。
また、通常のお餅の代用として里芋餅にすると嚥下しやすくなります。里芋餅の作り方は簡単で、蒸した里芋を熱いうちに皮をむき、片栗粉を混ぜてフライパンで焼くだけです。片栗粉を混ぜることでお餅に似た食感が得られます。
里芋には認知症やがんを予防する効果があり、食物繊維も豊富です。お正月のお餅代わりに試してみてはいかがですか?
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