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- 2024.05
地域密着型特別養護老人ホームぬくもり園(長野県)では、『お口の健康相談会』を実施。これまで、認知症の方への口腔ケアはあきらめがちな部分もありましたが、今後の歯科医院との密な連携体制に期待し、口腔ケアの重要性をしっかりと認識できるようなスタッフ向け研修会の実施も前向きに検討しています。
口腔ケアの重要性を理解するには危機感を持って取り組むことが大事
地域密着型特別養護老人ホームぬくもり園 施設長 小松正典さん
2024年4月から介護施設での口腔衛生の管理が基本サービスに組み込まれましたが、その少し前のタイミングで、日本訪問歯科協会から『お口の健康相談会』の案内をいただきました。
これまで、入所者様から訴えがあったり、私達の方で症状に気づいた時には歯科の受診はしていましたが、皆さんのお口の中を一斉にチェックすることはなかったのでちょうどいい機会だと思い、『お口の健康相談会』を実施しました。 歯医者さんとの密な連携体制に期待
『お口の健康相談会』には、私と看護師長が立ち合い、看護師長からお一人お一人の気になる部分などの情報を先生に提供しながらみていただきました。
どんな先生が来てくださるのか、少しだけ不安もありましたが、山口歯科医院から女性の先生が来てくださり、なかなか口を開いてくれない認知症の方にも上手にお声がけいただいて、手際よくスムーズに進んだと思います。
認知症の方は入れ歯を紛失することも多く、新しいものを作っても痛みや不具合をうまく伝えることができないので、嫌がって入れ歯を隠してしまったり、結局、はめなくなって、あきらめるしかないということがよくあります。これを解決するには、歯医者さんに日常的に深く関わっていただき、細かく連携することが重要だとずっと思っていました。
今回の『相談会』をきっかけに歯医者さんと密な連携体制づくりにも期待が持てました。 口腔ケアの研修会で職員の意識改革を
当施設では食後にきちんと口腔ケアを行うように看護師長が促していますが、重要だとわかっていても認知症でお口を開けるのを拒否する方も多いため、介護職員がうまくお声がけができないと、口腔ケアができずに、結局あきらめてしまうこともあります。
これまでも、口腔ケアの基本的な方法などの研修会を実施し、改善しましたが、それだけではスタッフ全員の意識が変わっていかないように感じました。口腔ケアの重要性やケアのコツを学ぶことはもちろん大切ですが、ケアできなかった場合のリスクなども強く訴えかけ、職員にもっと危機感を持ってもらうことで、意識改革が必要だと感じています。
今後はこうした勉強会・研修会もぜひ実施できたらいいですね。
入れ歯の適合チェック認知症などで意思表示をするのが難しい利用者様の場合、入れ歯が合っているか合っていないかを判断するのは難しいものです。
そんな時にはいくつかのチェックポイントがあります。
まずは会話の様子を観察してみましょう。話をしていて入れ歯が外れたり、会話中にカタカタと音がするのは、入れ歯が合っていないサインの一つです。
また、口腔ケアの際に入れ歯を外したら、入れ歯と粘膜が接している部分をチェックします。その部分に食べかすが多くついているようなら、その入れ歯は合っていない可能性が高まります。つまり、入れ歯がしっかりと吸着していなくて食べかすが入ってしまうほどのすき間ができていることを意味します。
入れ歯が外れやすい場合には、まずは上の入れ歯だけをつけて様子をみます。上だけつけて外れることなく、しっかりと装着されているようなら、上下の噛み合わせが悪いことも考えられます。?んだ時の力のかかり具合がアンバランスなために、入れ歯が外れやすくなっているのかもしれません。
入れ歯の不適合が疑われる時には、こうした様子も伝えながら、歯科医師に相談するとよいでしょう。
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