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- 2020.03
デイサービスの【セントケア熊本せいら】(熊本県)では、昨年、職員向けの勉強会と、利用者様向けの『お口の健康相談会』を実施しました。実施後は、職員も利用者様も口腔ケアへの認識が変わり、今では利用者様全員が食後のうがいなどに取り組んでいます。
少しずつできてきた口腔ケアの必然的な流れ
セントケア熊本せいら 所長 酒井朋之さん
私は2年半前に赴任しましたが、それまでは口腔ケアの取り組みは行われていませんでした。今は少しずつ取り組んでいこうとしている段階で、昨年、職員向けの勉強会と、利用者様向けの『お口の健康相談会』を実施しました。
来てくださった歯科医院の先生は、勉強会の時からご自分のお母様のエピソードなどを交えながらわかりやすくお話ししてくださったので、私たちもすんなりと入っていくことができました。
また、『お口の健康相談会』では、利用者様一人ひとりにしっかり向き合って対応されていたので「すごいなあ」と感心しました。 「先生に怒られるばい」利用者様の新鮮な反応
お口の中はとてもデリケートな部分なので、「『お口の健康相談会』をやります」と利用者様にお声がけをしたら、「人前で口の中を見せるのはちょっと……」と初めは拒まれる方もいました。「歯医者さん」というワードを聞いただけで、抵抗感がある方も多かったようです。
何十年ぶりかで歯医者さんにお口の状態をみてもらうという方もたくさんいました。「ああ、先生に怒られるばい」と言いながら、相談室に入って行かれる方もいて、普段とは違う利用者様の意外な一面を見ることができたのも新鮮でした。
相談会の結果で初めて、お父さんお母さんの口の中の状態を知ったというご家族の方も多く、知ることができてよかったと喜んでいただきました。また、『相談会』の後、数名の方が訪問歯科を申し込まれました。お仕事をされているご家族は、歯医者さんに連れて行く時間を取るのが難しいという方も多かったので、家に来てみていただけるのはとてもありがたいという感謝の言葉をいただいています。 お口の状況に応じた個別対応も今後の視野に
職員向けの勉強会の後は、口腔ケアの大切さを再認識しました。口腔内にはたくさんの細菌が住んでいるというお話を聞き、利用者様に「歯みがきをしましょう」「うがいだけでもしませんか」とお声がけをするようになりました。
最初は10数名しかやっていただけていない状況でしたが、今では30名全員がやってくれるようになり、必然的な流れができてきたと感じています。
利用者様のお口の状態は人それぞれ違います。勉強会では口腔ケアの方法や、スポンジブラシをはじめとするケアグッズなども教えていただきましたので、今後は一人ひとりに合ったものを選定して、個別対応していけたらいいなと思っています。
低栄養と体重減少「低栄養」とは、健康的に生きるために必要な量の栄養素が摂れていない状態を指します。
高齢者に多く見られ、食欲の低下や、口腔機能の衰えなどで摂食嚥下に問題を抱えるようになると食べにくくなって食事量が減り、体を動かすために必要なエネルギーや、筋肉量や筋力が低下して、元気がなくなったり免疫力が落ちたりして、体にさまざまな悪影響を及ぼします。
低栄養は体重減少率からも判断できます。「体重減少率」は「(通常体重−測定体重)÷通常体重」で算出します。1カ月間で5%の明らかな体重減少、または6カ月間で10%の明らかな体重減少が見られる場合は「低栄養状態」と判断されます。
ただし、低栄養状態は複数の指標で判断する必要があります。リスクが高いという数値が出た場合には、専門家に相談しましょう。低栄養が考えられる場合には、食事内容を見直すとともに、口腔ケアや口腔リハビリなどで摂食嚥下機能を改善することも大切です。
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