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- 2014.10
【IWAD環境福祉専門学校】(広島県)で副校長を務められる城田さんは、カムカム通信2度目のご登場です。前回は当時勤務されていたデイサービスでの口腔ケアの取り組みに ついてお話いただきましたが、今回は介護福祉士を育成する 教員の立場から、日頃感じていることについて語ってくださ いました。
口腔ケアの重要性を教員として正しく伝えたい
以前、愛媛県松山市のデイサービスで施設長をしていたとき、利用者様においしく食事をしていただくためには、歯みがきが非常に重要であることを利用者様や介護スタッフに伝えてきました。現在は介護福祉学科の教員として、学生や介護の現場で指導をしています。
介護現場におけるお口への関心の低さを痛感 実習などでさまざまな施設に行かせていただく機会が増えましたが、介護職の利用者様のお口への関心の低さに、驚かされることがあります。その利用者様が義歯なのか自分の歯なのか知らなかったり、ケアマネジャーさんも食事のことは気にかけても、歯が何本あるのかまでは把握していないケースが多く、アセスメントが不十分だと感じています。在宅で訪問介護を利用されている方も、掃除と食事の提供は必要でも、口腔ケアのことまではなかなか考えつかない。生活の基盤が整ってようやく歯のことに関心が向くけれど、様々な要因でなかなか対応できないというのが現状なのです。 口腔ケアは即戦力のケア 本校の学生は年齢層が幅広く、親の介護を経験された人や、定年退職後にいずれは自分もお世話になるかもしれないので、知識を得ておきたいということで資格を取りに来ている人もいます。
そういう学生にどういう授業を展開すればいいかと考えたときに、親や自分のために即戦力として実践できることが口腔ケアだと思いました。
とはいえ、介護福祉士の資格取得のための2年間の教育課程で中心となるのは、移乗介助技術やおむつ交換・排泄介助などで、口腔ケアを学ぶ時間はごくわずかです。
口腔ケアと誤嚥性肺炎の関係など少しずつ知られるようになってきましたが、きちんと認識しないと浸透していかないと感じ、教員として学生にはもちろん、外部にももう少し力を入れて教えていきたいと思っているところです。
歯の病気や予防に関する知識「デンタルIQ」は高齢の方でも上げていけますが、一人ひとりに合った関わり方が重要です。
現場の介護福祉士はどうしても機械的になったり、なんとかしてあげたいという気持ちから過介護になりがちですが、「やりましょう!」というだけではうまくいきません。
エビデンスケア(根拠に基づいたケア)という言葉がありますが、口腔ケアも重要性を認識して取り組むことが大切。教員として、正しい知識を伝えていきたいと思います。
セルフケアとプロフェッショナルケア「口腔ケア」には、自分で毎日行うセルフケアと、歯科医師や歯科衛生士などの専門家が行うプロフェッショナルケア(専門的口腔ケア)があります。
●セルフケア
・適切な歯ブラシを使って、毎日(なるべく毎食後)すみずみまできれいにみがく。
・歯間ブラシやフロスなども活用して、歯垢を取り除き、歯石を予防する。
・摂食・嚥下がスムーズになるように、口腔リハビリや口腔体操、マッサージなどで口腔機能を維持する。
・栄養バランスのよい食事をよく噛んで食べる。・自分で行えない場合は、家族や介護職が行う。
・歯科検診を定期的に受ける。など
●プロフェッショナルケア
・全身状態やお口の状況に見合った口腔ケアのアドバイスを行う。
・歯石の除去など、自分ではできない専門的なケアを行う。
・口腔機能の維持や回復のための指導やケアを行う。
・フッ化物洗口など、口腔トラブル予防のための薬剤の紹介やアドバイスを行う。
・食介護へのアドバイスを行う。など
お口の健康を維持するためには、セルフケアとプロフェッショナルケアの両方を上手に取り入れましょう。
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